研究課題/領域番号 |
19J10652
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研究機関 | 総合研究大学院大学 |
研究代表者 |
高取 沙悠理 総合研究大学院大学, 高エネルギー加速器科学研究科, 特別研究員(DC2)
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研究期間 (年度) |
2019-04-25 – 2021-03-31
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キーワード | 宇宙マイクロ波背景放射 / CMB / 宇宙物理 / 偏光観測 |
研究実績の概要 |
インフレーション仮説を実験的に検証することは現代宇宙論における重要課題となっている。本研究の目的は、宇宙マイクロ波背景放射(CMB)偏光観測用の新型レシーバーPOLARBEAR-2(PB-2)を用いた大角度スケールの観測により、原始重力波起源のBモード偏光の精密探索を行うことで、インフレーション仮説の実験的検証を行うことである。PB-2レシーバーは高エネルギー加速器研究機構(KEK)での開発と性能評価試験完了後、南米チリのアタカマ高地(標高5200m)にある観測所に設置された望遠鏡本体へ統合され、現在統合試験が進行中である。 これまで、PB-2レシーバーに搭載される超伝導検出器用の較正用の光源装置の開発を行ってきた。この較正光源装置からの参照信号に対する検出器の応答性を測定することで、各検出器の時間応答性や、観測中の焦点面の温度変化や大気のゆらぎ等の影響による検出器の応答性の変動を評価することができる。 本年度は、統合試験において実際に較正光源装置からの参照信号を検出することに成功し、信号データの取得を行うことが出来た。統合試験での観測データ解析は共同研究機関であるアメリカのローレンスバークレー国立研究所にて行い、実際に較正装置の信号に対する各検出器の応答から超伝導検出器のバイアス状態の評価や、搭載された数千個の検出器の応答性の測定に成功した。これらの成果については国際学会と国内学会にて発表済みである。 また、天体観測の測定データと組み合わせることで、較正光源装置の信号に対する性能評価をおこなった。 年度末にはデータ解析の結果を踏まえ、実際にアタカマ高地にある観測所に行き、現地にて追加の観測データの取得も行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
連続回転半波長板の搭載および望遠鏡の長期観測開始といったプロジェクト全体の計画にはやや遅れが出始めているものの、これまで開発してきた較正光源装置からの参照信号のデータの取得や統合試験での天体観測データ解析など、報告者が本年度予定していた計画は概ね予定通り進行したからである。
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今後の研究の推進方策 |
今後はこれまでの統合試験で取得してきた観測データの解析および、較正光源装置によるデータの較正を行い、較正が十分精度良く行われていることを実際に確認する。また、望遠鏡の長期観測開始の遅れにより、観測期間が当初予定していたものより短くなることが予想されるため、本観測データ取得後、短期間で解析・結果が出せる様に長期観測開始を見据えたパイプラインの開発などソフトウェアの準備を先行して進める予定である。
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