研究課題
イネの生産性向上には、光合成能力の強化は不可欠な課題である。炭酸固定酵素Rubiscoは現在の大気条件における最大光合成速度の律速要因であり光合成能力強化の有力なターゲットであるが、Rubiscoを過剰生産させたイネでは、期待されたほどの光合成速度の向上は見られなかった。これは、生体内で機能する活性化されたRubiscoの割合(Rubisco活性化率)が低下したことが原因だと考えられた。そこで、本研究ではRubiscoとともにRubisco活性化を担う酵素Rubisco activase (RCA)を同時過剰生産させることで光合成能力の強化、および個体生育の改良を試みる。本年度はRubiscoとRubisco activaseの同時過剰生産イネの光合成機能の解析を行った。Rubisco量、RCA量の増加が確認された計3系統のRubisco・RCA同時過剰生産イネにおいて解析を行い、光飽和条件におけるRubisco活性化率は、いずれの系統でも野生型イネと同レベルまで回復していることが確認された。しかしながら、葉温25℃条件において、同時過剰生産イネの光合成速度に有意な変化は認められなかった。一方、夏場のほ場環境に相当する高温条件(葉温36℃)においては、現在の大気CO2濃度における光飽和光合成速度が約15%向上していることが確認された。高温条件における光合成をより詳細に評価するためA-Ci解析を行ったところ、低CO2環境における光合成速度の上昇は、Rubiscoタンパク質量とRubisco活性化率より算出した活性型Rubisco量と高い正の相関を示しており、Rubisco量の増加とRCA量増加によるRubisco活性化率の維持が光合成能力の向上に寄与したことを示した。本研究の成果は、米国植物科学会誌「Plant Physiology」に掲載された。
令和2年度が最終年度であるため、記入しない。
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