研究課題
本研究の目標は太陽系で最も火山活動が活発なイオの大気生成・散逸過程を理解することである。目標の達成に近づくために電波干渉計ALMA のアーカイブデータの解析を行った。その結果、木星衛星イオのSO2分子の純回転スペクトル強度の空間分布から、火山が密集している赤道周辺の西側(A)と、北半球高緯度の東側(B)にSO2ガスが集中していることを明らかにした。また、これらの領域で、SO2のスペクトルの形や複数の輝線の発光強度比が異なることを見出した。その原因としては、溶岩による蒸発と噴火口からのプルームの二種類の放出メカニズムの寄与とその変動が考えられる。領域Aではイオが陰に入る前は151 ± 70 K に対し、入った後は311 ± 41 K に上昇することが分かった。この領域ではイオが陰に入った後、昇華大気が凝結により消失し、溶岩起源ガスのみが残されたと考えた。一方、領域Bのスペクトル形状は、二つの速度成分の重ね合わせで説明できた。それらの成分の速度差は~0.6 km/s で、プルームによって放出されているガス速度の視線方向成分と地表付近からの昇華成分との差を反映していると解釈できる。これらの成果を複数の学会および研究集会で発表した。また、The Astrophysical Journal Lettersにこの内容を論文として投稿し、受理・出版された。紫外線宇宙望遠鏡ひさき衛星のデータを解析することで、イオ軌道周辺の酸素原子による紫外線発光の時空間変動の調査を行った。その結果、観測から酸素中性トーラスの空間分布、及びその火山活動に伴う長期間の変動をはじめて明らかにした。共同研究によってこのひさきの観測結果と3次元モンテカルロモデルの比較を行い、イオから原子を火山プルーム周辺で局所的に散逸しているかを議論している。その結果は今後論文として投稿する予定である。
令和2年度が最終年度であるため、記入しない。
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The Astrophysical Journal
巻: 907 ページ: L6~L6
10.3847/2041-8213/abd39f