研究課題/領域番号 |
19J10744
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
公文代 將希 東北大学, 薬学研究科, 特別研究員(DC2)
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研究期間 (年度) |
2019-04-25 – 2021-03-31
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キーワード | チトクロームP450 |
研究実績の概要 |
臨床現場で用いられている医薬品の多くは、主に薬物代謝酵素チトクロームP450 (CYP)によって代謝される。CYPには複数の分子種があり、それぞれに遺伝子多型が存在する。特にCYP分子内のアミノ酸置換を及ぼす遺伝子多型は、薬物動態に影響し、薬効や副作用発現の個人差に影響を及ぼしうる。したがって、CYPの遺伝子多型に由来するアミノ酸置換型バリアントの酵素活性変化を詳細に解析することで、患者個々の遺伝的特質に最も適した薬物療法の実践につながる。本年度は、ヒト胎児腎由来293FT細胞を用い、組換えCYP3A4発現に最適な遺伝子導入条件、CYPタンパク質合成に必須な補因子の最適な添加条件などを検討し、酵素活性評価に最適な条件を決定した。従来の哺乳動物細胞を利用した組換えP450発現系の欠点であった低発現量を実際のヒト肝臓に近似した量にまで増加させ、低濃度化合物の代謝活性を精度良く評価することが可能となった。さらに、4776人の日本人全ゲノム配列データベースを利用して、医薬品代謝に重要なCYP分子種における新規バリアント情報を抽出し、それぞれの検体が変異を有していることをサンガーシークエンスによって確認した。これにより次年度におけるバリアント酵素の機能変化解析に繋げることができた。次年度は各分子種のバリアントの代謝活性を評価し、得られる酵素反応速度論的パラメータを利用して、遺伝子型から表現型を高精度に予測する薬物代謝酵素活性パネルを創出して個別化薬物療法に応用を目指す。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
哺乳動物発現系に使用する最適な細胞の選択、組換えCYPタンパク質発現に最適な遺伝子導入条件や補因子の最適な添加条件などを決定し、当初の研究計画通り進捗しているため。
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今後の研究の推進方策 |
医薬品代謝に重要なCYP2C9、CYP2C19およびCYP3A4について、4776人の日本人全ゲノム配列データベースから新規バリアントを抽出し、それぞれの検体が変異を有していることを確認した後、それぞれのバリアント酵素の機能変化解析を行う。機能変化の解析は、それぞれの分子種に選択的な基質薬物を各基質濃度で一定時間反応させ、代謝物生成量を質量分析器(現有)にて定量して、酵素反応速度論的パラメータを算出する。得られる固有クリアランス値の比をスコア化して、遺伝子型から表現型を高精度に予測する薬物代謝酵素活性パネルの創出を目指す。
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