研究課題/領域番号 |
19J10750
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研究機関 | 神戸大学 |
研究代表者 |
秋山 遼太 神戸大学, 農学研究科, 特別研究員(PD)
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研究期間 (年度) |
2019-04-25 – 2021-03-31
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キーワード | ステロイドグリコアルカロイド / SGA / トマト / ジャガイモ / DOX |
研究実績の概要 |
1. トマトにおいてα-トマチン生合成に関わるステロイド5α位還元酵素遺伝子を同定した。トマトのRNA-seqデータより、候補遺伝子SlS5αR1とSlS5αR2を選抜した。組換え酵素を用いた機能解析では、SlS5αR1とSlS5αR2ともに推定生合成中間体に対してステロイド5α位還元活性を示した。さらに、CRISPR/Cas9によってそれぞれの遺伝子破壊系統を作成した結果、SlS5αR1ノックアウトではα-トマチン量は変化せず、SlS5αR2ノックアウトではα-トマチン量が大幅に低下した。以上より、SlS5αR1とSlS5αR2は同様の酵素機能を持つが、SlS5αR2のみがα-トマチン生合成に関わるステロイド5α位還元酵素遺伝子であることを明らかとなった。 2. ジャガイモにおけるα-ソラニン生合成の鍵酵素遺伝子であるStDOXSDが染色体上で7つのDOX遺伝子とクラスターを形成していることを見出した。このクラスターに含まれるDOX遺伝子のうちStDOXSDL1、StDOXSDL2の全長ORFを単離した。そのうち、StDOXSDL1はStDOXSDと同様の活性を有することが明らかとした。RNA干渉法による発現抑制実験の結果、StDOXSDL1はほとんどソラニン生合成には関与していないこと明らかとなった。StDOXSDは既知のSGAと同様な発現パターンを示すのに対してStDOXSDL1は異なった発現パターンを示した。ソラニン型SGAを生産しないトマトにもStDOX130同様の活性を有する酵素をコードする遺伝子が存在するが、単一遺伝子であり多重化していない。さらにこの遺伝子は全草で遺伝子の発現が見られなかった。以上の結果より、StDOXSDの祖先遺伝子がジャガイモにおいて多重化し、新たな発現制御を獲得することでソラニンを生産するようになったと示唆される。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
上記1について、ステロイド5α位還元酵素遺伝子はSGAの構造多様性を生み出す要因であるC5-6位の二重結合の有無をコントロールするステロイド5α位還元酵素遺伝子を新規に単離同定した。ステロイド5α位還元反応は植物ホルモンであるブラシノステロイド生合成に関わる反応であり、ステロイド5α位還元酵素遺伝子は植物において広く保存されている。ナス科植物ではステロイド5α位還元酵素遺伝子が多重化しおり、トマトではその一方がステロイドグリコアルカロイド生合成に特化していることを示した。この多重化はステロイドグリコアルカロイドの化学進化において重要であったと考えられる。上記2についてもジャガイモ におけるソラニン生合成を例に遺伝子の多重化と新たなステロイドグリコアルカロイド代謝経路の獲得との関連を見出した。これらの理由から順調に進展していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
多重化した遺伝子の転写調節について解析する予定である。既知のステロイドグリコアルカロイド生合成遺伝子は転写因子によって包括的な制御を受けていることが知られている。多重化した遺伝子の上流のプロモータ領域の解析などを行い、転写制御を受けているのか、またどのように既存の転写制御ネットワークにリクルートされるのかを明らかにしたい。 また、これまでに同定した酵素遺伝子の情報をもとに野生種トマト・ジャガイモから新規なステロイドグリコアルカロイド生合成遺伝子の単離同定を目指す。
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