本研究では,光信号に応じて形状変化するDNAゲルを用いた3次元配置システムの開発をめざしている.DNAゲルは高い粘性を有しており,光信号に応じたゲル形成・分解を誘起することで空間的な粘性勾配を作り出し,細胞の運動制御・配置を実現する.今年度は,光信号に応じて光形成・分解可能なDNAゲルを設計し,動作検証を行った.光信号に応じたDNAゲルの形成・分解を可能にするために,光熱変換分子であるBHQ-1とBBQ650を構成DNAに修飾し,照射する光の波長に応じたDNA反応制御を実施した.光入力に応じてDNAと特異に結合する蛍光分子の発光強度が局所的に変化することを実証実験により確認した.本結果より各波長の光照射によってDNAゲルの形成・分解を可逆的に制御できることを実証した. また,DNAゲルによて細胞などのumサイズ物体の運動を制御可能か検証するため,光照射によるDNAゲルの局所分解と粘性変化に伴う物体の運動変化を定量的に評価した.DNAゲル内でブラウン運動するポリスチレンビーズの移動変位を観察することで,光照射によって空間的な粘性を3倍ほど低下させられることが明らかとなった.さらに,光パターンを利用することで数umオーダーで粘性を変化できることを実証した. 本成果より,光制御によってDNAゲルの粘性を自在に変化させることができ,また粘性変化に伴って微小な物体の運動を柔軟に変化できることを示した.
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