研究実績の概要 |
本年度は、主に2つの研究課題に取り組んだ。第1に、国内の買収事例に関する独自データベースの作成、第2に、質問票における具体的な質問事項の検討である。 第1に、本研究では日本企業が関連する買収事例の詳細なデータベースを構築する。当該データベースは、買収タイプ、目的、取引価格、時価総額、買収スキーム、代表取締役、関連企業の住所に関する情報を含む。本年度は、主に2014年以降の買収を中心におよそ8,400件について、ウェブ上に公開されている複数のサイトからスクレイピングをすることによってデータを収集した。さらに、技術系企業においてはその技術特性および発明体制を明らかにするために、特許データを収集し、買収データベースとの連結作業を一部について実施した。 第2に、具体的な質問事項について検討した。本研究の目的は、1)被買収企業の技術者のイノベーション低下をもたらす組織的要因の特定、および2)買収を受けた技術系スタートアップのイノベーションに関する組織能力蓄積がどのように変化するかの解明である。本年度は、1)についての質問事項について優先的に検討し、先行研究での理論レビューを実施した。理論研究では、1)組織行動論、2)イノベーション論、3)経営戦略論の領域を中心に先行研究を渉猟し、理論研究および実証研究に向けた情報収集を実施した。同時に、買収を経験した複数の技術系企業にインタビューを行い、質問事項について検討を行った。これらの現時点で実施したデータベース構築と理論研究をもとに、定量・定性分析を行った。この分析によって得られた知見は、今後の質問票調査および事例研究にて活用する予定である。
|