種内変異は多様性の一つであり、その創出機構を明らかにすることは生物多様性のより包括的な理解につながる。種内の体サイズクラインを生じさせる要因については様々なメカニズムが提唱されているが、非適応的なプロセスに着目した研究は非常に少ない。本研究では遺伝的多様性の枯渇による低温耐性の非最適化が、トウキョウサンショウウオの分布北限でみられる負の体サイズクラインを生じさせている可能性について、野外調査、飼育実験、集団遺伝学的解析を組み合わせた統合的アプローチにより検証した。本年度はトウキョウサンショウウオの分布全域にあたる福島県から千葉県のエリアで集められた約900個体のDNAサンプリングを用いて、ユニバーサル且つゲノムワイドなSNPマーカーを用いたゲノム集縮解析法の一つMIG-seqをおこない集団遺伝構造と集団の遺伝的多様性、遺伝子流動尾ついて水底を行った。また、それと並行して13集団から採取した卵嚢から孵化させた幼生を用いて低温耐性の非核実験を行った。これらの結果、北限近くの集団では遺伝的多様性が非常に低く周囲との遺伝子流動も少ないこと、そのような少雨団では寒冷地に生息しているにもかかわらず、より温暖な地域よりも低温耐性が発達していないことがわかった。これらの結果から、歩l苦言近くでの遺伝的多様性の枯渇と低温耐性の制限が体サイズの小型顔生じさせていることが強く示唆された。これは体サイズクライン創出機構の全く新しいプロセスを示すものといえる。
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