当該年度は,主に以下3点の項目に取り組んだ. (硫化亜鉛結晶中の転位が発光特性に及ぼす影響を評価)前年度までで,硫化亜鉛結晶において,転位の導入により発光スペクトルが変化することが明らかになっている.そこで当該年度は,分光光度計を用いて,転位を導入した結晶のさらに詳細な発光特性評価を実施した.その結果,転位の導入前後において,発光の減衰挙動および励起光スペクトル形状が変化した.このようにして,転位の導入により,硫化亜鉛結晶の発光特性が大きく変化することが明らかになった. (硫化亜鉛結晶の塑性変形に伴う内部組織変化を評価)前年度までに,硫化亜鉛結晶が,光環境下では脆性的,暗室下では延性的な変形挙動を呈すことが明らかになっている.一方で,光環境制御下の塑性変形による内部組織変化については不明であった.そこで,変形後結晶についてX線回折実験を行った.その結果,暗室下の塑性変形において,部分転位の運動が活性化されていることが示唆された.このようにして硫化亜鉛結晶の変形メカニズムについて新たな知見が得られた. (硫化亜鉛結晶の塑性変形挙動に及ぼす温度とひずみ速度の影響を評価)前年度までは,室温において非常に遅いひずみ速度条件での機械的変形試験を行っていた.そこで本年度は,温度およびひずみ速度を様々に変化させて変形挙動を調査した.その結果,ひずみ速度を増加させることにより,変形メカニズムが変化する可能性が示唆された.この内容については,今後も継続して研究を進め,そのメカニズム解明を目指す予定である.
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