二年目は、一年目に開発した光反応性基「セレノフェン-2-イル置換型α-ケトアミド」の特性評価及びスフィンゴ糖脂質プローブへの応用に注力し、以下の研究項目を実施した。 1. 新規光反応性基「セレノフェン-2-イル置換型α-ケトアミド」の開発 モデル化合物であるα-マンノースアナログを用い、1H NMRを用いた水中におけるケトアミド構造の安定性評価、高速液体クロマトグラフィーを用いた光分解速度の解析を行い、従来型のチオフェン型構造と同等の水中安定性、光安定性を有することを示した。また、コンカナバリンAレクチンを用いたタンパク質親和性を等温滴定型カロリメトリーにより評価したところ、水素結合やファンデルワールス相互作用に基づく特異性の高い相互作用を示し、ケトアミド構造の導入によりタンパク質との親和性を妨げないことが示された。これらの結果を踏まえ、コンカナバリンAの光アフィニティラベル化を行い、標識化効率をSDSポリアクリルアミドゲル電気泳動により確認したところ、高い標識化効率及び高選択的ラベル化を達成した。以上の結果より、セレノフェン-2-イル置換型α-ケトアミド構造は光反応性基として有用である可能性が示唆された。 2. 光親和性GM3プローブの合成と細胞膜におけるラフト親和性タンパク質との光架橋実験 一年目に合成した、シアル酸9位アミノ基修飾型GM3骨格並びに、アルキン及び前述の光反応性基を有する光反応性基ユニットを用い、両者をカルバメート結合を介してカップリングし、光親和性GM3プローブの合成を達成した。A549細胞を用いた光架橋、アジド-アルキン環化付加反応によるビオチンタグの導入、ストレプトアビジンカラムを用いたGM3-標的タンパク質複合体のアフィニティ精製、プロテオミクス解析を行い、17種類の親和性タンパク質候補が同定された。
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