研究課題/領域番号 |
19J10866
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
中島 啓貴 東北大学, 理学研究科, 特別研究員(PD)
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研究期間 (年度) |
2019-04-25 – 2021-03-31
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キーワード | 測度距離空間 / 等周不等式 / 最適輸送計画 / 測度の集中現象 |
研究実績の概要 |
M. Gromovは,測度距離空間全体の集合にリプシッツ順序と呼ばれる順序関係を定め,豊かな理論を展開した.その理論の一つとして,リプシッツ順序を用いた等周不等式の定式化が挙げられる.私は,リプシッツ順序を加法的誤差を許すように拡張し,離散空間と連続的な空間の等周不等式を統一的に扱う方法を得た.誤差付きリプシッツ順序を用いて定式化しておくことにより,等周不等式は測度距離空間の極限操作に関して保存される.この理論は今までとは性質のことなる空間での等周問題の解を求めることにつながる点で重要であり,本研究の基礎となるものである.本年度はこの理論について論文にまとめ,学術雑誌への投稿を行った. 一方,二つの測度距離空間の間の距離であるbox distance やobservable distanceについての研究成果も得られた.Box distanceは測度距離空間の理論における基本的な距離であり,測度を考慮したバージョンのGromov-Hausdorff距離のようなものである.一方,observable distanceは測度の集中現象に由来する興味深い距離である.しかし,これら二つの距離はパラメータと呼ばれる写像を用いて定義されており,直感的な理解が難しい.パラメータは必ず存在するが,具体的に構成することが困難である.私は,これらの距離の輸送計画を用いた表示を得た.この表示により,これら二つの距離のより直感的理解が可能となった.輸送計画は具体的な構成あるいは直感的構成が可能である.さらに,その輸送計画に関して最適輸送が存在することも示した.これらの結果については現在論文を執筆中である.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の基礎となる自身の研究結果について論文にまとめ,投稿することができた. また,測度距離空間の幾何における重要な距離に関して,新たな表示を得ることができた.この表示は基本的な道具として利用されていくことが予想される.この結果については現在,論文執筆中である. n次元正軸体の等周不等式を求める計画については現在コンピュータプログラムを作成中である.
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今後の研究の推進方策 |
測度距離空間の幾何における重要な距離の新たな表示が得られたため,この表示を利用し,既存の理論の書きかえをする.これによって既存の理論の理解を深め,新たな結果につなげる. n次元正軸体の等周不等式の解については引き続きコンピュータプログラムを作成し,計算結果と照らし合わせながら証明を進めていく.
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