研究実績の概要 |
まず、トレッドミルを用いたマウス強制走行実験を行い、運動によって真皮組織において運動依存的にコラーゲン遺伝子の発現が上昇することを確認した。次に、運動依存的なコラーゲン遺伝子発現上昇がマイオカインを介しているかを検証した。真皮線維芽細胞にCtrl-CM, EPS-CMをそれぞれ添加し、24時間培養し、Col1a1遺伝子の発現を調べたところ、動物走行モデルと同様に上昇しており、培養上清中に放出されるコラーゲンもEPS-CMの添加により増加することが明らかとなった。これらのことから、真皮組織における運動依存的なコラーゲン発現分泌の上昇にはマイオカインが関与している可能性が示された。 次に、真皮組織における運動依存的なコラーゲン発現分泌の上昇に関わるマイオカインの同定を試みた。これまでの研究において、すでに運動抑制性マイオカインであることが同定されている CXCL10について、そのレセプターであるCXCR3の発現が確認された。EPS-CMにおいてはCXCL10量が有意に減少していることが明らかとなっているため、CXCR3アンタゴニストを真皮線維芽細胞に添加し、コラーゲン分泌量の変化を調べたところ、アンタゴニスト添加によりコラーゲン分泌が上昇することが明らかとなった。すなわち、骨格筋収縮によって骨格筋近傍のCXCL10濃度が減少し、真皮線維芽細胞のCXCR3シグナルを減弱した結果、コラーゲン分泌が上昇する可能性が示された。 また、2020年度は新型コロナウイルス感染症の影響により学会発表を実施することができなかったため、昨年度からの進展はなかった。
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