今後の研究の推進方策 |
これまでの研究の結果,感情制御を使用する傾向が高い者と一緒に過ごす機会の多い者も,感情制御の傾向が高くなる (i.e., 感情制御の他者への波及効果) という結果が示されている。また,そうした感情制御が精神的健康に関与することが明らかになった。 本年度は,以下の2点について検討を行う。まず1点目は,感情制御への介入を行うことで,他者への波及効果を経て,ペア (あるいは集団) の精神的健康が改善するか検討することである。ペアの片方に対して,先行研究を参考に (e.g., Mennin & Fresco, 2013),感情制御を促進する介入を実施する。そして,介入前を含め,5時点の縦断調査を実施することで,介入を受けた者だけでなく,そのペアの感情制御傾向が高まり,精神的健康が促進されるか検証する。 2点目に,他者への波及効果を「感情制御能力」の観点から検討する。これまでの研究では,感情制御を日々の生活の中で行う頻度 (i.e., 感情制御傾向) にのみ焦点を当ててきた。しかし,他者への波及効果が観察,あるいは言語伝達による学習を介して生じている可能性を踏まえると,どれくらい感情制御を上手くできるか (i.e., 感情制御能力) にも影響すると考えられる。そこで,介入研究に合わせて,感情制御能力を測定することで,この点について検討を行う。 ただし,新型コロナウイルス状況下において,これまでとは他者との関わり方が大きく変容していること,また,対面での研究が推奨されないことから,実験実施の延期,あるいは,状況要因を考慮した研究に切り替える可能性もある。
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