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2019 年度 実績報告書

褐藻類における寒流域での単為生殖系統の進化メカニズムとその進化的意義

研究課題

研究課題/領域番号 19J10967
研究機関北海道大学

研究代表者

星野 雅和  北海道大学, 理学院, 特別研究員(DC2)

研究期間 (年度) 2019-04-25 – 2021-03-31
キーワード褐藻類 / 単為生殖 / 有性生殖 / 進化
研究実績の概要

褐藻カヤモノリ属2種(Scytosiphon lomentaria,S. promiscuus)において、有性生殖により繁殖する集団(有性集団)と、メス個体のみで単為生殖により繁殖する集団(単為生殖集団)を発見した。分子系統解析から、S. lomentariaにて3回、S. promiscuusにて2回、有性集団から単為生殖集団への進化が起こったことが推測された。これら5系統の単為生殖集団について、それらと近縁な有性集団と分布域を比較したところ、4系統の単為生殖集団は、近縁な有性集団よりも寒冷な地域に分布し、1系統の単為生殖系統は近縁な有性集団とほぼ同所的に分布していた。単為生殖集団と有性集団がほぼ同所的に分布する地点を3地点発見した。それらの地点では、単為生殖集団は波当たりの良い場所、有性集団は波当たりの穏やかなところに生育していた。これらのことから、単為生殖集団の進化には、寒冷な環境や、波当たりが関係することが推測された。
有性生殖を失い無性的にのみ繁殖を行うようになった生物では、有性生殖に関与する形質がその適応価を失い、中立もしくは非適応的となり、劣化することが知られている。そこで、今回発見した5系統の単為生殖集団のメス個体にて、性フェロモン(オス配偶子を誘引する)生産能と、オス配偶子との配偶子融合能という2つの有性的形質の状態を調べた。S.lomentraiaの1系統、S.promiscuusの2系統の単為生殖集団のメス個体において、性フェロモンはLC/MSとGC/MSで検出できなかった。また、S.promiscuusの2系統の単為生殖集団のメス個体は、オス配偶子と融合しないか、極めて低い融合率を示した。今後、他の単為生殖系統でも確認を続ける必要があるが、褐藻カヤモノリの単為生殖集団において、無性化に伴う有性的形質の抑制/劣化が起こっていることが推測された。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

3: やや遅れている

理由

分子系統解析について:当初の計画通りミトコンドリアcox1配列の取得と、MIG-seq法の実施による大量のの一塩基多型情報(SNP)の取得に成功した。cox1配列を用いた解析は終了したが、SNPデータを用いた解析は終了しておらず現在進行中である。
QTL解析による有性的形質・無性的形質の遺伝的基盤について:F1配偶体における形質の予備的な観察から、着目した形質が明瞭な遺伝パターンを示さず、QTL解析により明解な結果を得ることができない可能性が出てきた。そのため、F1配偶体130個体を得たものの、それ以上のフェノタイピングを保留している。

今後の研究の推進方策

当初計画していたQTL解析が上欄記載理由により頓挫、計画していたトランスクリプトーム解析の経費も実際に支給された研究費では遂行が難しい。そのため、研究計画を改める必要がでてきた。
幸い、当初の研究材料であったScytosiphon lomentariaの単為生殖集団のほかに、同属で近縁種のS. promiscuusにおいても、メス個体のみで単為生殖集団を発見することができた。SNPデータを用いた予備的な系統解析結果は、単為生殖集団がS.lomentariaで3回、S.promiscuusにて2回、独立に進化したことを示唆した。今後の研究では、これらの5つの単為生殖系統において、(1)有性的形質(性フェロモン生産・配偶子融合能力)の抑制/退化と無性的形質(配偶子サイズの増大・配偶子の迅速な単為発生)の獲得が、どの程度並行的に起きているのか検証、(2)近縁な有性生殖系統との詳細な系統関係・地理的分布パタンの解明、の2点を目的として研究を行い、カヤモノリ属での単為生殖系統の進化パターンを探る。

  • 研究成果

    (5件)

すべて 2020 2019

すべて 雑誌論文 (1件) (うち国際共著 1件、 査読あり 1件) 学会発表 (4件) (うち国際学会 1件、 招待講演 1件)

  • [雑誌論文] Species delimitation of Planosiphon gracilis morphospecies (Scytosiphonaceae, Phaeophyceae) from Japan and the description of Pl. nakamurae sp. nov.2020

    • 著者名/発表者名
      Hoshino Masakazu、Croce Maria Emilia、Hanyuda Takeaki、Kogame Kazuhiro
    • 雑誌名

      Phycologia

      巻: 59 ページ: 116~126

    • DOI

      10.1080/00318884.2019.1709144

    • 査読あり / 国際共著
  • [学会発表] 褐藻類における有性生殖と単為生殖の地理的分布パタン2020

    • 著者名/発表者名
      星野雅和
    • 学会等名
      日本生態学会第67回大会
  • [学会発表] 稀産紅藻ナガオバネSchimmelmannia plumosaの分類学的再検討2020

    • 著者名/発表者名
      星野雅和、猪野千尋、北山太樹、小亀一弘
    • 学会等名
      日本藻類学会第44回大会
  • [学会発表] 褐藻カヤモノリの生殖様式と性フェロモンについて2019

    • 著者名/発表者名
      星野雅和
    • 学会等名
      第33回海洋生物活性談話会
    • 招待講演
  • [学会発表] Insights into the origin of parthenogenetic populations in the brown alga Scytosiphon lomentaria (Scytosiphonaceae, Ectocarpales)2019

    • 著者名/発表者名
      Masakazu Hoshino, Mitsunobu Kamiya, Kazuhiro Kogame
    • 学会等名
      7th European Phycological Congress
    • 国際学会

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公開日: 2021-01-27  

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