研究課題/領域番号 |
19J10982
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
望月 洋佑 東京大学, 法学政治学研究科, 特別研究員(DC2)
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研究期間 (年度) |
2019-04-25 – 2021-03-31
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キーワード | 国際裁判 / 訴訟要件 / 国内救済完了原則 |
研究実績の概要 |
本研究は、(1)原告適格要件と(2)紛争存在要件という2つの訴訟要件の分析を通じて国際司法裁判の機能を評価し、現代国際法の法実現制度において国際司法裁判が占める位置の解明を試みるものである。今年度は、本研究の第1の柱である原告適格要件について考究するための手掛かりと見込まれる「国家間」の「国際的」な裁判の領分についての視座を獲得すべく、国家間裁判との対比における私人-国家間裁判の領分と、国際裁判との対比における国内裁判の領分との関係とを意識しつつ探究することとした。具体的論点として、同じく訴訟要件である国内救済完了原則に着目し、重層的な紛争処理手続構造を定めるICSID条約を素材として検討を行った。 投資家-国家間のICSID仲裁への紛争付託が合意された場合、国内救済完了を要件としない合意があったとの推定がはたらく。この規定と国内救済完了原則との関係について、学説では、そもそも私人の訴えについて国内救済完了原則が妥当するかが大きな対立軸となる。しかし条約起草過程では、私人の訴えについても一般に国内救済完了が要求されることは前提とされ、争点は、この規定が紛争当事者の意思の推定にすぎないか、一般則からの逸脱をなすか、であった。学説と起草過程との対立軸のずれは、国内救済完了原則自体の理解にとって示唆的である。また、国内手続との対比における国際手続の領分を測るための手掛かりとして、一般則・各制度レベルの規定に加え、後者におけるその規律の強度という視点が導かれる。 ICSID仲裁判断不履行後に可能となる外交的保護については、国内救済完了が要求されるのか、要求されるとして尽くすべき「国内救済手続」とは何か、が問題となる。背後には、この外交的保護の請求原因如何、ICSID条約の紛争処理構造における外交的保護の位置如何、という問題があり、起草過程・学説・仲裁例を通じて検討を行っている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
「研究実績の概要」にて述べたとおり、ICSID条約における国内救済完了原則の性質についての検討を通じて、重層的な紛争処理手続構造における手続相互の関係や、その関係の制度レベルにおける規律の強度、という視点から国家間国際裁判が果たすべき領分について検討の指針を得つつあり、すなわち原告適格要件について考えるための重要な手がかりを獲得しつつある。
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今後の研究の推進方策 |
次年度は、今年度の研究を踏まえつつ、来年度もICSID条約の紛争処理手続における国内救済完了原則について研究を継続する。その結果を踏まえて原告適格要件自体について検討し、さらには紛争存在要件の研究へと進みたい。
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