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2019 年度 実績報告書

相変態を積極活用した新型超伝導センサ:高温超伝導コイルの高速異常検出に挑む

研究課題

研究課題/領域番号 19J10989
研究機関東北大学

研究代表者

泊瀬川 晋  東北大学, 工学研究科, 特別研究員(DC2)

研究期間 (年度) 2019-04-25 – 2021-03-31
キーワード高温超伝導コイル / クエンチ検出 / クエンチ保護 / 低温超伝導線材 / 次元解析 / 有限要素法 / 低温実験 / 最適設計
研究実績の概要

2019年度は、高温超伝導(HTS)コイル向けのクエンチ検出用超伝導センサの最適設計に向け、①センサの構造や材料物性等のセンサの検出性能に関わる因子の解明とその影響についての調査、また②センサ内電流の制約条件の検討を進めた。
まず①について。2019年度開始時は、先行研究にてセンサ検出感度を決定する主な因子として、(A)センサの安定化材の材料及び量と(B)検査電流の制限条件が重要であるということが明らかになっていた。しかし、(A)、(B)および検出感度の間の関係性は本来一つの関数で表されるべきものであるが、個々の小因子(熱・電気的特性)間の関係のみが明らかになっているのみであり、それらの繋がりを明確に表現する必要があった。そこで2019年度は、4.2K液体ヘリウム冷却化のHTSテープ線材"一枚"に"Nb-Ti"センサを使用する体系を対象に絞り、"自己磁場下"での(A)、(B)と検出感度間の統一的な関係を明らかにすることを目標とした。それに対し、以前まで取り組んでいた数値解析や実験といった手法に加え、支配方程式やΠ定理から導出した無次元定数等を直接的に用いた理論ベースの考察も行った。その結果、今までに得られていたセンサ検出感度に関する数値解析および実験結果と、(A)および(B)との関係を理論ベースで矛盾なく説明および解釈が可能となった。
②については、クエンチ検出センサの焼損のリスクや既存のクエンチ検出・保護システムでのクエンチ検出信号に対する必要条件に関する情報を参考に、検査電流の最適条件を定義した。センサは実機コイルのターン間に埋め込むことを想定しているため、熱的な環境は断熱環境に近く、電流遮断遅れによるセンサの焼損リスクが高い。そこで、断熱環境でのクエンチ検出後のセンサ内温度上昇率を目的関数とすることで、その値が制限値以下となるような安全側の検査電流条件が定義できた。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

3: やや遅れている

理由

2019年度は、高温超伝導(HTS)コイル向けのクエンチ検出用超伝導センサの最適設計に向け、センサの構造や材料物性等のセンサの検出性能に関わる因子の解明とその影響についての調査、またセンサ内検査電流の制約条件の検討を進めた。それに対し、センサ材料を"Nb-Ti"、磁場環境を"自己磁場下"と対象を絞り、センサのクエンチ検出性能の支配因子の推定と、実機内環境を想定した検査電流の安全側の条件設定が行えた。
しかし、当初は磁場下での検討も含めての目標設定を行っていたにも関わらず、大型実験器具の損傷や不具合のため、特に実験による"自己磁場下"条件での検証に想定よりも時間がかかり、"自己磁場下"のみの検討となった。
以上の理由から、当該研究は"やや遅れている"と判断した。

今後の研究の推進方策

まず、前年度と同様HTSテープ線材一枚に対してクエンチ検出用の超伝導線材を配置する体系を対象とし、本年度は特に3T以上の磁場がかかった環境においての、クエンチ検出器の構造また検査電流条件の最適化について検討する。昨年度までに、磁場のある環境でのクエンチ検出器の検出性能の支配因子や、それによる検出性能への影響を考慮した、検出器構造や検査電流条件の最適化に関する知見はある程度得られている。そのため、本年度の本項目に関する検討は、実験的な数値解析結果の検証を主とする。磁場下実験用の器具等の設計は前年度に終了しており、それらの納品次第上記内容を進める予定である。同時に、高磁場向けの検出器材料の使用の検討も進めているため、適宜それらの最適設計についても取り組む。本項目の終了は7月末予定である。
次に、上記項目により得られた各運転環境における検出器の特性や検出性能の最適化に関する知見を元に、HTSパンケーキコイルに対する本クエンチ検出器の有効性の実証を行う。本項目では、まずは、複数のクエンチ検出用センサのHTSコイル内への適切な配置方法について検討を行う。そして、外部磁場をかけることで実機を模擬したHTSコイルに対し、数値解析で予測した最適な配置、検査電流条件にてクエンチ検出センサを組み込み、本提案手法の実証試験を持って、本手法の有効性の評価を行う。本項目の終了は11月末予定である。
最後に、実証試験で得られたデータや知見を参考に、核融合炉用マグネットやNMR装置用マグネットなどの数値解析モデルを対象として、本手法の実機に組み込んだ際のクエンチ検出・保護シナリオについて検討する。ここでは、変動磁場環境やセンサ自体のインダクタンスによるセンサの検出性能への影響など、実機体系における様々な課題やリスクを想定し、それらに対する最適な策も検討する。本項目の終了は12月以降の採用期間内である。

  • 研究成果

    (3件)

すべて 2020 2019 その他

すべて 雑誌論文 (1件) (うちオープンアクセス 1件) 学会発表 (1件) (うち国際学会 1件) 備考 (1件)

  • [雑誌論文] ITER機構インターンシップ体験記:泊瀬川 晋2019

    • 著者名/発表者名
      泊瀬川 晋
    • 雑誌名

      プラズマ・核融合学会誌

      巻: 95 ページ: 580-581

    • オープンアクセス
  • [学会発表] Investigation on optimal designs of superconducting quench detectors for REBCO coils2020

    • 著者名/発表者名
      HASEGAWA Shin, ITO Satoshi, NISHIJIMA Gen, HASHIZUME Hidetoshi
    • 学会等名
      10th ACASC/2nd Asian ICMC/CSSJ Joint Conference
    • 国際学会
  • [備考] 泊瀬川晋_ウェブサイト

    • URL

      https://www.shinhasegawa.com/

URL: 

公開日: 2021-01-27  

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