研究実績の概要 |
低温超伝導クエンチ検出器(LTS QD)の希土類系銅酸化物超伝導(REBCO)コイルへの有効性を評価するべく、①Nb-Ti QDの応答性への支配因子の解明およびその影響評価、また②LTS QDによるREBCOコイルクエンチ検出、保護性能の評価を行った。 ①では、4.2 K液体He冷却下の局所劣化を持つREBCOテープ線材に、安定化材の異なるNb-Ti QDを使用する体系を対象とした数値解析、実験を実施し、本手法による早期クエンチ検出において許容可能なLTS QD-REBCO線材間接触熱抵抗や、早期クエンチ検出可能なLTS QDへの要求(安定化材、検査電流負荷率)が明らかとなった。 ②では、Cu-Ni安定化材を持つ極細Nb-Ti QDをREBCOコイルの電気絶縁層に導入し、4.2 K液体He冷却下の局所劣化を持つREBCOコイルの早期クエンチ検出を実証した。本実験結果を再現可能な有限要素数値解析プログラムの開発も実施し、当プログラムを用いて実機運転条件(4.2 K, 最高30 T)を仮定したREBCOコイルのクエンチ検出、保護解析を行った。結果、Nb-Ti QDとNb3Al QDの組み合わせ使用により、励磁中のREBCOコイルを局所欠陥由来のクエンチを早期に検出し、コイル内ホットスポット温度を高々40 K程度(<< 許容温度: 150 K程度)に抑えることが可能であることが示された。さらに、熱的安定性が高いがゆえにクエンチ検出が難しいとされる無絶縁、金属絶縁コイルに対しても本手法が有効である可能性も実験的に確認された。 以上より、LTS QDの普遍的な設計方針を提案し、その絶縁ありREBCOコイルへの有効性を示すという当初の目的は達成された。また、無絶縁コイルや金属絶縁コイルへの本手法の有効性も確認されており、本手法が任意環境かつ任意のコイルに適用可能であることが示された。
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