研究課題/領域番号 |
19J11030
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
谷内 元 北海道大学, 理学院, 特別研究員(DC2)
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研究期間 (年度) |
2019-04-25 – 2021-03-31
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キーワード | マグマ / 火山 / 噴火 / マントル / 沈み込みスラブ / 利尻火山 / 水 / 防災 |
研究実績の概要 |
本研究では、沈み込み帯火山の長期的な進化過程を解明を目指し、利尻火山を対象として、代表的噴出物から深部情報を抽出し、その時間変遷を追跡することを目的としている。2019度は、以下の成果を得ることができた。 (1)利尻火山噴出物の年代学:試料採取と鉱物分離作業を行なった上で、岡山大学惑星物質研究所にて、Ar同位体比の測定とK含有量の定量を行い、12試料から有意なK-Ar年代を得た。これらの結果などを用いて、利尻火山の時間―噴出量階段図を作成した。 (2)中期活動噴出物の岩石学:利尻火山の中期活動では、カルクアルカリ系列の安山岩およびデイサイトが特徴的に噴出しているものの、これらの岩石からの深部情報抽出はこれまで行われていなかった。そこでまず、安山岩の解析を進めた。その結果、マントル由来マグマは~5 wt.%の含水量をもつアルカリ玄武岩であることが明らかとなり、利尻火山におけるカルクアルカリマグマの成因解明につながった。本研究の結果は2019度中にLithos誌から公刊された。一方のデイサイトは、高Sr/Y比のアダカイト質マグマであり、スラブ由来超臨界流体が上部マントルまで上昇し、水成分とメルト成分に分離したメルト成分から直接的に生成されていたことを明らかにした。本結果についても2019年度中に国際誌に投稿した。このように、中期活動のスラブ~地表に至るマグマプロセスの情報抽出については概ね完了し、本研究課題を完遂する上での残す課題は初期活動噴出物となった。 (3)初期活動噴出物の岩石学:残す課題である初期活動噴出物について、約2週間利尻島に滞在し、野外調査および試料採取を行った。採取した試料については、2019年度中に全試料の岩石薄片の作成、検鏡、全岩化学組成分析(主要・微量)、全岩放射性同位体比分析(Sr-Nd-Pb)について完了し、解析を鋭意推進しているところである。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2019年度の研究実績の通り、これまでに代表的噴出物への噴出年代の挿入と中期活動噴出物からの情報抽出が完了した。後期活動噴出物は先行研究によって詳細に研究がなされていることから、残す課題は初期活動噴出物からの情報抽出である。初期活動噴出物については2019年度中に岩石記載と化学分析を完了しており、現在解析を進めているところである。この解析が成功すると、利尻火山におけるスラブ~地表に至るマグマプロセスの長期変遷を追跡可能となり、本研究課題が完遂されることとなる。以上の理由から、「おおむね順調に進展している。」と判断される。
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今後の研究の推進方策 |
来年度前半は、すでに分析を終えている豊漁沢溶岩流について速やかに解析を進め、論文を投稿することを目指す。来年度後半には、沈み込みスラブから地表に至るまでの各プロセスの時間変遷を追跡し、沈み込み帯火山の長期進化過程に迫りたい。
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