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2019 年度 実績報告書

抗がん剤の副作用と耐性化に着目したcyclooxygenase阻害薬の効果の検証

研究課題

研究課題/領域番号 19J11051
研究機関北海道大学

研究代表者

岡本 敬介  北海道大学, 生命科学院, 特別研究員(DC2)

研究期間 (年度) 2019-04-25 – 2021-03-31
キーワードシスプラチン / NSAIDs / 腎障害 / 耐性化 / セレコキシブ / xCT / がん幹細胞
研究実績の概要

(1) シスプラチンの副作用を増悪させないNSAIDsの探索: ラット正常腎上皮細胞株であるNRK-52Eを用い、17種類のNSAIDsがシスプラチンによる細胞障害に及ぼす影響を評価したところ、セレコキシブは細胞障害を顕著に軽減させ、ジクロフェナクとフルフェナム酸は障害を軽微に減弱させ、フルルビプロフェンは細胞障害を増悪させることが明らかとなった。また、NSAIDs間におけるシスプラチンによる細胞障害へ与える影響の違いとして、抗酸化作用とオートファジーが関与していることを明らかとした。さらに、シスプラチン起因性腎障害モデルラットにおいても、セレコキシブは障害を軽減し、フルルビプロフェンは障害を増悪させることを明らかとした。
(2) がん幹細胞に抗腫瘍効果を示すNSAIDsの探索: NSAIDsががん幹細胞に抗腫瘍効果を示すかを評価するに先立ち、2種類のシスプラチン耐性ヒト肺がん細胞株であるA549/DDPとSBC-3/DDPを樹立した。これら耐性株に先述の17種のNSAIDsをシスプラチンと同時添加したところ、ジクロフェナクは相加・相乗的に、フルフェナム酸は相加的にシスプラチンの殺細胞効果を増強させることが明らかとなった。一方で、セレコキシブはcystine/glutamate transporter (xCT) 発現上昇を介してシスプラチンに対する抵抗性を獲得させることが明らかとなった。また、耐性株への評価後、がん幹細胞に対する影響を評価したところ、ジクロフェナク、フルフェナム酸は耐性株の結果と同様に相加的にシスプラチンの殺細胞効果を増強させていた。しかしながら、耐性株ではシスプラチン抵抗性を増強させたセレコキシブはSphere Formation AssayではxCT発現を上昇させながらもがん幹細胞に対して相加的にシスプラチンの殺細胞効果を増強させていた。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

本検討では、シスプラチン投与時に副作用を増悪させないNSAIDsの探索とシスプラチン耐性化抑制による治療効果向上の検証を目的として種々検討した。当初の予定通り、検討に用いた17種類のNSAIDsの中でシスプラチン起因性腎障害を軽減させるものと増悪させるものを見出した。一方で、NSAIDs間におけるシスプラチンによる障害へ与える影響の違いは、当初NSAIDsがCyclooxygenase (COX) のサブタイプであるCOX-1とCOX-2に対する阻害強度の違いと予想していたが、実際は抗酸化作用とオートファジーが関与していることを明らかとし、分子機構の一端を解明することができた。また、当初の予定通り、シスプラチン起因性腎障害を軽減させたNSAIDsの中でシスプラチン耐性を抑制し、がん幹細胞に対しても抗腫瘍効果を高めるNSAIDsを見出すことができた。以上の結果より、シスプラチンによる腎障害を増悪させずに抗腫瘍効果を高めるNSAIDsの候補を見出すことができ、また、これらの結果を学会で発表することができたことから、抗がん剤耐性化による治療中止を解決する1つの知見として薬物治療の最適化の発展に貢献したと考えられる。

今後の研究の推進方策

(1) シスプラチンの副作用を増悪させないNSAIDsの探索: セレコキシブ投与がシスプラチン起因性腎障害を軽減させるかを後方視的臨床研究で評価していく。しかしながら、単施設の過去の患者データだけでは適切な統計解析を行える患者数が確保できないことがパイロット試験で明らかとなったことから、今後は他施設の患者データを利用した多施設共同臨床研究を行う予定である。
(2) がん幹細胞に抗腫瘍効果を示すNSAIDsの探索: xCTの発現を上昇させたセレコキシブは、シスプラチン耐性ヒト肺がん細胞とがん幹細胞において異なる結果を示した。今後はこれらセレコキシブの矛盾した結果の違いを検証していく。
(3) NSAIDsによるシスプラチンの治療効果向上: (1) と (2) より、シスプラチン起因性腎障害を増悪させずにシスプラチンの抗腫瘍効果を高めるNSAIDsとしてジクロフェナクを見出したことから、ジクロフェナクをシスプラチンと併用投与した時に、実際に腎障害を増悪させずに抗腫瘍効果を示すかをin vivoレベルで評価していくため、シスプラチン耐性ヒト肺がん細胞を移植させたXenograftモデルマウスを作製し、種々検証していく。

  • 研究成果

    (6件)

すべて 2020 2019 その他

すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件) 学会発表 (2件) 備考 (3件)

  • [雑誌論文] Non-steroidal Anti-inflammatory Drugs Are a Risk Factor for Cisplatin-induced Nephrotoxicity: A Meta-analysis of Retrospective Studies2020

    • 著者名/発表者名
      OKAMOTO KEISUKE、SAITO YOSHITAKA、NARUMI KATSUYA、FURUGEN AYAKO、ISEKI KEN、KOBAYASHI MASAKI
    • 雑誌名

      Anticancer Research

      巻: 40 ページ: 1747~1751

    • DOI

      10.21873/anticanres.14128

    • 査読あり
  • [学会発表] シスプラチンの抗腫瘍効果を増強させるNSAIDsの探索とシスプラチン起因性腎障害との関連2020

    • 著者名/発表者名
      岡本 敬介、小林 正紀、齋藤 佳敬、古堅 彩子、鳴海 克哉、井関 健
    • 学会等名
      日本薬学会第140年会
  • [学会発表] リバース・トランスレーショナルリサーチに基づいたシスプラチン起因性腎障害に及ぼすNSAIDsの影響の解析2019

    • 著者名/発表者名
      岡本 敬介、齋藤 佳敬、小林 正紀、古堅 彩子、鳴海 克哉、井関 健
    • 学会等名
      第29回医療薬学会年会
  • [備考] researchmap-Keisuke Okamoto

    • URL

      https://researchmap.jp/ksk0602

  • [備考] ResearchGate-Keisuke Okamoto

    • URL

      https://www.researchgate.net/profile/Keisuke_Okamoto

  • [備考] 臨床薬剤学研究室ホームページ

    • URL

      http://rinshoyakuzaigaku.pharm.hokudai.ac.jp/#pagetop

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公開日: 2021-01-27  

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