研究課題/領域番号 |
19J11070
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
中沢 禎文 北海道大学, 大学院工学院, 特別研究員(DC2)
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研究期間 (年度) |
2019-04-25 – 2021-03-31
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キーワード | 微粉化活性炭 (SPAC) / 急速砂ろ過 / ポリ塩化アルミニウム (PACl) / 超高塩基度 / 非凝集性粒子 |
研究実績の概要 |
微粉化活性炭(SPAC)を主流の浄水方式である急速砂ろ過へ適用するためには,高い粒子除去率をもつ分離操作が求められる.本年度は,SPACの分離性に及ぼすポリ塩化アルミニウム凝集剤(PACl)の特性および凝集条件の影響を明らかにすることを目的とした. 中和法製および塩溶解法製の超高塩基度PAClを比べると,Al重合体の割合と高コロイド荷電量を有する点で同一であったが,除濁性が大きく異なることが分かった.すなわち,塩溶解法製は原水の硫酸イオンが極低濃度の場合を除き凝集性と加水分解性に優れたが,中和法製は凝集するために多量の硫酸イオンを要した.両PAClの成分の差異はEIS-MS分析に現れ,中和法PAClにのみ高いm/z (>500)の重合体が存在しており,この重合体は製造時の高温処理により生成し,低い加水分解性と凝集性をもたらすと考えられた.他方,塩溶解法製の通常塩基度PAClはモノマーの割合が大きく,コロイド荷電量が小さいうえ,硫酸イオンの影響をほとんど受けずに加水分解し除濁することが分かった. ベンチスケール流通式凝集沈澱砂ろ過装置により粒子除去性に及ぼす凝集条件の影響を調べた.超高塩基度PAClは通常塩基度PAClより残留粒子濃度を大幅に低減したが,いずれのPAClでも急速混和の短絡を小さくすることで残留粒子濃度が低減されることが分かった.また,処理過程の非凝集粒子濃度が残留粒子濃度と高い相関性を有し,超高塩基度PAClにより非凝集粒子が効果的に除去された.急速混和-フロック形成中の間のPACl由来Al重合体の挙動を調べたところ,モノマーが急速に加水分解してコロイドへ変化し,生成するコロイドが凝集性に寄与しているものと考えられた. 研究成果を国際会議3件と国内学会3件で報告した.そのうち,国際会議1件でWET Excellent Presentation Awardを獲得した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
目的に沿って,微粉化活性炭(SPAC)を処理対象として超高塩基度PAClと通常塩基度PAClの凝集性能を比較し、PACl製造方法と製造時および加水分解中に生成するアルミニウム重合体種とその凝集機能の関連を評価した.また,従来の凝集処理で懸濁物質の処理指標とされてきた濁度にはSPAC残留濃度の評価指標性がないことを明らかにして,新たに残留性の指標として非凝集性の粒子に着目し,凝集処理条件が非凝集性粒子濃度に及ぼす影響と残留濃度との連動性を明らかにした. 以上より,おおむね順調に進展していると判断した.
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今後の研究の推進方策 |
超高塩基度PAClによる浄水処理性の悪化が見られた浄水場・臭気物質が高濃度のため微粉化活性炭による高度処理の導入が求められる浄水場から原水を取り寄せて,硫酸イオン以外の原水水質(イオン,有機物)が及ぼすPAClの凝集性能への影響を明らかにしようと考えている.原水水質とPAClによるSPACの凝集除去性を照合して,PAClに含まれるAl重合体の凝集機能を考察する.得られた知見を踏まえて,幅広い原水水質と攪拌操作においてSPACの高効率除去が可能なPAClの成分調整を試みる.さらに,実際の浄水場で現行利用されている粉末活性炭と凝集剤の組み合わせに対して,SPACと調整したPAClの組み合わせの有効性を,複数の指標(除濁性,臭気物質除去性,微粒子残留性)により検証し,急速砂ろ過処理への適用性を検証する.
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