研究課題
本研究では生物から環境中に放出されたDNAである環境DNAを検出する環境DNA分析手法を用いて、過去の水中堆積物に含まれる魚類のDNAを検出することで、魚類の近過去復元を行うことを目的としている。また、そのために必要な堆積物環境DNAの抽出法の改善と性質理解を試みた。堆積物環境DNAの性質理解については、小河川における環境DNAメタバーコーディング手法を用いた生物モニタリング手法の最適化に関する研究を行なう上で、サンプルの種類(水or堆積物)、サンプリングの位置(右岸・流心・左岸)、サンプルの量に着目し、一般に用いられている水環境DNAと比較しながら検証した。その結果、堆積物サンプルを用いた際にはサンプリング位置によって種数・種組成が異なることを明らかにした。このことは未解明な点が多い堆積物環境DNAの基本的情報として重要であり、堆積物環境DNAが空間的に不均一に分布していることを示した。琵琶湖における近過去復元については、堆積物コアを利用し、アユ(Plecoglossus altivelis)とイサザ(Gymnogobius isaza)を対象にリアルタイムPCRでeDNAの定量を行なった。堆積物の年代測定については共同研究者らと行い、その結果、本研究で採取した堆積物コアは過去約110年を遡ることが可能であった。環境DNA分析の結果、最も古い年代で、アユでは約100年前、イサザでは約35年前の堆積物層からDNAが検出された。また、アユについては堆積物中でのDNAの分解を補正するために、先行研究で行われているようなクロロフィル色素の分解モデルを用いて補正率を算出し、それを用いてeDNAデータを補正したところ、CPUEとの比較において、マージナルな正の相関が見られた。堆積物中のDNAの長期間の分解を補正することは今後の課題の一つになるだろう。
令和2年度が最終年度であるため、記入しない。
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Limnology
巻: 22 ページ: 221~235
10.1007/s10201-020-00645-9
Communications Biology
巻: 3 ページ: -
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