研究課題/領域番号 |
19J11212
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研究機関 | 立命館大学 |
研究代表者 |
上床 隆裕 立命館大学, BKCリサーチオフィス, 特別研究員(DC2)
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研究期間 (年度) |
2019-04-25 – 2021-03-31
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キーワード | 高階スピン重力理論 / 超弦理論 / AdS/CFT対応 |
研究実績の概要 |
本研究の主な目的は、高階スピンホログラフィーの観点からAdS/CFT対応や超弦理論を理解することである。特にウィルソンラインを用いて、3次元AdS上の高階スピン重力理論の相関関数を量子効果も含めて解析することで、一般のパラメータ領域におけるAdS/CFT対応を検証したい。超弦理論との関係を調べるためには、高階スピン重力理論にある種の拡張が必要であることがわかっている。2019年度はこのような拡張として「超対称化」と「行列化」に着目して研究した。
2019年度の研究成果は主に「N=2の超対称性をもつモデルへの一般化」と「行列化した高階スピンホログラフィーの新しいモデルの提案」の2つである。 前者については、N=2の超対称性をもつモデルについて、最も簡単なセットアップで知られている結果が再現できることを示した。これにより、N=2のモデルにおいてもウィルソンラインを用いた量子補正の評価が可能であることがわかった。この結果は、他のより非自明な物理量の解析に用いる予定であり、今後のさらなる研究が期待される。 また後者については、行列化した高階スピンホログラフィーの具体的なモデルを新しく構成した。このような具体的なモデルはこれまでほとんど知られていなかった。本研究では、行列化した高階スピン理論の漸近対称性と一致する、具体的なコセット模型を提案した。両者の双対性については、パラメータの対応及び代数の厳密な一致という2つの強い証拠を示すことができた。この成果は当該年度中に論文として発表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の目的は高階スピンのホログラフィーを用いてAdS/CFT対応を検証、特に超弦理論との関係を明らかにすることである。中でも1年目の目標は、ウィルソンラインを用いた3次元AdS上の高階スピン重力理論における相関関数の解析手法を、超対称な理論へ一般化することであった。この1年目の目標は、N=2の超対称性をもつモデルで、最も簡単な2点関数の解析については部分的に達成できた。この成果は3点以上の相関関数等の議論を踏まえて、さらに詳しい解析の後に論文として発表する予定である。 さらに上記に加えて、行列化した高階スピンホログラフィー模型について研究した。この「行列化」とは高階スピン理論を用いて超弦理論に現れる物理状態を説明するうえで必要となる拡張である。この研究では、これまでほとんど知られていなかった、行列化した高階スピンホログラフィーの具体的なモデルを新しく構成することに成功した。またこの双対性について、パラメータの対応及び代数の厳密な一致という2つの証拠を示した。この成果は論文として発表した。 このように2019年度は当初の研究目標を達成しつつ、さらに高階スピン理論と超弦理論を結びつける新たなアプローチについても成果を得ることができた。そのため、本研究課題は十分な進展があったと言える。
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究課題については、まずは当初の予定通りバルク側において、申請者の提案した解析手法の、N=2もしくはさらに大きな超対称性をもつモデルへの一般化を進める。この際研究計画にあったように、取り扱いが比較的簡単になると予想される状態に注目して解析を進める。また、一般に超対称性を導入することで、量子効果が抑えられることが期待できるため、計算可能な高次の補正も明らかにしたい。 また、これに加えて「現在までの進捗状況」で述べた新しいアプローチである、行列化した高階スピン理論のホログラフィーについても研究を進める。これは当初の計画には無かったが、高階スピン理論の結果から超弦理論を議論するうえで必須となるアプローチであるため、積極的に研究する。既に2019年度に、対称性の観点から具体的なモデルを構成することに成功しているので、今後はより詳しく相関関数等の物理量を解析する予定である。この際、当初の計画で注目していたウィルソンラインを用いた解析手法に関する議論が応用できるか考察したい。
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