本研究の目的は気候変動に伴い台風の強大化が予測される中,それに伴う豪雨,高潮,強風による甚大な被害が予測される.そこで,台風の発達に関わる大気と海面間の運動量・熱交換の物理過程を解明し,台風へのそれぞれの影響を評価し,再現性を向上することである.そこで,暴風雨下での降雨と海面砕波飛沫の発生状況を船舶レーダやパーティクルカウンタ,ディスドトメータを用いた観測を行った. ディスドロメータを用いた観測より,風速が10m/sを超えると風速10m/s以下の場合よりも1mm以下の粒子数が増加する傾向があることがわかった.船舶レーダを用いた観測より,風速に伴って受信電力が増加する傾向があることがわかった.反射電力が増加する理由は,海面からの反射電力であるシークラッターとして扱われる.しかし,海面付近から得られる受信電力は海面のみならず,海面から発生する飛沫粒子,泡,降雨からの受信電力が含まれる.そこで本研究ではそれぞれの要因を分類することで,観測結果より海面から発生する飛沫粒子の鉛直分布を推定することを試みた.海面,飛沫,泡,降雨からの受信電力が得られる原理は明らかであり,今後は理論式に基づく受信電力の鉛直分布を推定することで,観測結果から飛沫粒子の鉛直分布を推定する. 得られた結果は暴風時の接地境界層の乱流構造の解明や運動量・熱交換の物理過程解明に結びつくと考えらえれる.来年度以降は上述した受信電力の要因分類を行い,存在しうる粒子の鉛直分布が運動量や熱交換へどれだけ影響するのか検討し,気象現象への影響について検討していく予定である.
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