研究課題/領域番号 |
19J11299
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
LUO HAO 東北大学, 工学研究科, 特別研究員(DC2)
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研究期間 (年度) |
2019-04-25 – 2021-03-31
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キーワード | 複素減衰 / 一般化マクスウェルモデル / 因果的フィルター / 負剛性 / Biotモデル / レオロジー / 非整数階微積分 |
研究実績の概要 |
2019年度は以下の研究実績を得た. 1)複素減衰を因果的に良い精度で近似できるone-pole, one-zeroの双一次型フィルターを基に複素減衰のパッシブデバイスとしての実装を検討した.具体的には,オイルダンパーなどを用いた粘性要素とコイルばねや,ゴム材などを用いたバネ材の直列結合によるマクスウェル型ダンパーと負剛性要素の組み合わせを提案した.特に,免震建物の場合,負剛性は復元材の数を減らすなどで実現できる. 2)複素減衰を時間領域で因果的に近似する方法はこれまでにも幾つか提案されているが,その中でも最も古いモデルであるBiotのモデルについて,メルカトル級数を用いた拡張を行うことで本研究課題で提案している双一次型フィルターとの関係を明らかにした. 3)双一次型フィルターの非整数次化による拡張を検討し,次数を0に近づけるほど,当該フィルターの虚部(損失係数に対応)の振動数依存性が小さくなることを明らかにした.更に特殊な場合として,次数を0次にすると,既往のMakrisモデルに一致することを明らかにしている. 4)複素減衰の因果的近似モデルの統一理論.上記に述べたように,次数が1の時は,双一次型フィルター(Keivanモデル)であり,0次の場合はMakrisモデルとなることから,提案モデルは,既往のモデルを統一的に説明できるモデルであり,複素減衰近似の統一理論を構築する足がかりとなっている. 5)非整数次フィルターによる計算効率の高い複素減衰の時間領域解析法の開発.非整数次微積分のL1アルゴリズムによる時間領域解析法を開発した.提案手法では従来一般化マクスウェルモデルの解析に用いられていた状態空間法よりも方程式の次数を低減することが可能となっている点が独創的な点となっている.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初計画していた非整数階微積分による複素減衰の因果的近似モデルの統一的表現については構築に成功した.その副産物として,複素減衰付き構造物の時間領域応答解析について,計算精度を保ちながら従来の方法より方程式の次数を減らすことが可能な方法の提案ができた.一方で,実験による理論の検証については,試験体の製作と,試験体単体特性の同定までは実施できたものの,免震構造物に試験体ダンパーを組み込んでの実験の実施まで至らなかった.実験については,2020年度に実施することとする.全体的には,理論的検討が当初予定より進展したことで,実験的検討の遅れをカバー出来ていると判断し,全体としては概ね順調に進展していると評価している.
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今後の研究の推進方策 |
2020年度は,2019年度に実施まで至らなかった実験的検証を行う予定である.実験の実施は,鋼製コイルばね試験体とオイルダンパー縮小試験体を直列に繋いだマクスウェル型ダンパー試験体の周波数応答特性把握試験,免震試験体にこれを組み込んだ振動台実験,マクスウェル型ダンパー試験体のみを物理試験体とし,残りを数値試験体とした免震建物のリアルタイム・オンラインハイブリッド実験として実施する予定である.これと並行して,研究成果をまとめ,博士論文を執筆すると共に,成果を広く周知するために審査付きの国際journalに英文論文としてまとめる予定である.
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