研究実績の概要 |
プロトカテク酸(PCA)、シリンガ酸(SA)、フェルラ酸(FA)によりそれぞれ転写誘導を受けるTonB-dependent transporter (TBDT)様遺伝子の破壊株について、当該基質の変換能と生育能を測定したが、破壊により変換能と生育能が低下するTBDT様遺伝子は見受けられなかった。 リグニン由来芳香族化合物の取り込みに関与するTonB-ExbB-ExbD複合体(Ton複合体)の成分を明らかにするために、まずSYK-6株が有する6つのtonB様遺伝子のうち、遺伝子破壊株を取得できないtonB1と、鉄の取り込みに関与するtonB2を除く、tonB3-6の単独破壊株、および多重破壊株のリグニン由来芳香族化合物(11種類)の変換能と生育能を評価したが、これらの破壊株の変換能、生育能は野生株と同等であった。SYK-6株が3つずつ有するexbB、exbD様遺伝子のうち、exbB2/tolQ、exbD3/tolRは外膜構造の安定化に関与することが示された。遺伝子破壊株が取得できないtonB1-exbB1-exbD1-exbD2(tonB1オペロン遺伝子)については、プラスミドによりSYK-6株で高発現させた場合に、PCA、SA、FAを含む7種類のリグニン由来芳香族化合物の変換能が向上したため、取り込みへの関与が強く示唆された。 5,5’-dehydrodivanillateを取り込むTBDTであるDdvTの生化学的な解析を行うために、精製タンパク質の取得を試みた。ddvTをプラスミドで大腸菌BL21(DE3)に導入し発現させたところ、DdvTが封入体を形成したため、尿素を用いたrefoldingによる封入体からの精製を試みた。その結果、size-exclusion chromatographyにより単分散のピークが確認されたため、封入体からDdvTを精製することに成功した。
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