研究実績の概要 |
バロトロピック条件下においてHall効果を持つ圧縮性磁気粘性流体方程式系(以下, Hall-MHD)の適切性と時間減衰評価を臨界斉次Besov空間の枠組みで考察した. 数理モデルとしてのHall-MHDは, 2011年にAcheritogaray-Degond-Frouvelle-Liuにより提唱され, 非斉次Sobolev空間の枠組みにおいては適切性と時間減衰評価が既に知られている. しかし先行研究では磁場が空間遠方で消滅することを仮定している為, 定数平衡状態まわりでのHall-MHDの線型化方程式は流速の運動方程式と磁場の誘導方程式が完全に分離する. 従って線型解は互いに影響を及ぼさない為, 適切性や時間減衰評価等の数学解析が比較的容易である. そこで本研究では, 遠方で定数状態の磁場が働いている仮定の下では流速と磁場の方程式が分離しないことに着目し, その仮定の下でHall-MHDの臨界空間における適切性を考察し, 以下の結果を得た. ・Hall-MHDの時間局所適切性を$L^2$-臨界斉次Besov空間上で示し, 十分小さい初期値に対しては時間大域解が構成できることも示した. 証明の要点としては, Hall項に対するKato-Ponce型の交換子評価及び誘導方程式に対してChemin-Lerner空間上でのエネルギー法を適用し, 密度函数の微分損失を回避することである. ・Fourier空間に於いて線型解の時間各点評価を導出し, 得られた各点評価を用いてHall-MHDの時間大域解が線型解と同じ速さで時間減衰することを示した. 特に時間大域解の高周波部分は線型解よりも早いオーダーで減衰することも示した.
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今後の研究の推進方策 |
引き続きHall-MHDの適切性をより一般の函数空間上で考察する. 例えば, 臨界空間の可積分指数に関する制限を緩和したい. またBeale-Kato-Majda型の解の正則性判定条件についても考察し, 時間局所解が時間大域解に延長できるための十分条件に関して渦度を用いて特徴付けることを目標とする. 余裕があれば, Hall項の前に時間緩和係数を付けHall-MHDの解が磁気粘性流体方程式系の解に収束するかを特異極限問題の観点から考察したい.
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