研究課題
申請者は、異常翻訳を認識し、異常たんぱく質と異常mRNAの分解を誘導する品質管理であるRQCと NGD、さらに異常リボソームの分解を誘導する品質管理である18S NRDの分子機構について、出芽酵母を用いて解析を進めた。【1】異常翻訳を認識し異常mRNAの分解を誘導する品質管理NGD:異常翻訳を認識する主体であるE3ライゲースHel2が、衝突した2つのリボソームであるDisomeを認識し特異的な部位でのユビキチン化を起こすことを示した論文において、NGDに必須なHel2依存のユビキチン化部位としてeS7を同定し、NGDの分子機構の解明に大きく貢献した(EMBO J., 2019)。【2】異常翻訳を認識し異常たんぱく質の分解を誘導する品質管理RQC:Hel2のホモログであるZNF598によりユビキチン化されたリボソームを認識し解離させるRQT複合体を哺乳細胞で同定し(Sci Rep, 2020)、衝突リボソームユビキチン化とRQT複合体による解離反応について試験管内再構成系の構築を進めた。【3】異常リボソームの分解を誘導する品質管理18S NRD:新規のリボソームユビキチン化酵素の同定と機能解析、試験管内でのユビキチン化反応を構築した(Cell Rep., 2019)。また、リボソームユビキチン化の普遍的な機能を解明する研究を行った。【4】翻訳とmRNA安定性制御におけるeS7のユビキチン化の機能解析:eS7のユビキチン化により制御されるコドン至適度に依存したmRNAの安定性を決定した。さらに、リボソームの速度センサーであるCcr4-NOT複合体が、eS7のユビキチン化依存にリボソームに結合することを見出した(Science, 2020)。現在、終止コドンを欠失した異常mRNAの末端でのリボソーム解離反応におけるCcr4-NOTの機能を解析中である。
1: 当初の計画以上に進展している
リボソームのユビキチン化によるmRNAやタンパク質の安定性制御について、4報の論文を報告することができた。出芽酵母を用いたリボソームの衝突停滞や速度低下によるmRNAやタンパク質の発現制御機構について、in vivoおよびin vitroの解析系を用いて、詳細な分子機構を解明することができた。
現在は、コドン至適度依存のmRNA安定性制御を行うことで報告したCcr4-Not複合体の機能について(Science, 2020)、さらなる解析を進めており、リボソームの異常停滞とそれに伴う解離反応への関与について、検証中である。さらに、哺乳細胞を用いたin vitro再構成系の構築も進めており、リボソームの停滞により惹起されるユビキチン化反応、解離反応について、精製タンパク質等を用いて、より詳細な分子機構について迫ろうとしている。
すべて 2020 2019 その他
すべて 国際共同研究 (2件) 雑誌論文 (2件) (うち国際共著 1件、 査読あり 2件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (5件) 備考 (1件)
Science
巻: 368 ページ: eaay6912
10.1126/science.aay6912
Scientific Reports
巻: 10 (1) ページ: 3422
10.1038/s41598-020-60241-w
http://www.pharm.tohoku.ac.jp/~idenshi/inada_lab_HP/