タケ類は有用植物として日本各地で移植・栽培されてきたが、近年、管理放棄に伴い、野生化し、既存の森林を置き換えるように拡大するケースも報告されるようになっている。本研究では、タケ類の独特な生活史特性が、高い分布拡大能力に寄与していると考え、その理解に向け、各地で野生化している大型のタケ類(マダケ属のモウソウチクとハチク)を対象に、地上部と地下部のクローン成長様式を定量的に評価してきた。今年度はおもに以下4つの研究を進めた。①定着後の竹林における、竹ラメットの集合体の発達・維持機構、②地下茎への配分様式の解明、③光合成同化産物の輸送様式、④竹ラメットと樹木個体の光競争の評価、である。4つの課題それぞれについてデータを継続的に収集し、①と②については一定の成果を得た。①:タケ類は一旦優占すると、長期にわたり純林を維持するが、調査を行ったハチク林では、古く細いタケを新しく太いタケに2年周期で置き換えることにより、成長を続ける機構が明らかとなった。ここで竹林を構成する竹ラメットの密度と平均重量の間に自己間引きの法則の関係性が成り立つこともわかった。②:地上部の素早い成長は、地下茎によって支えられているが、地下茎の生産量や平均滞留時間を一度の掘り起こし調査からでも推定できることがわかった。③については、採取したサンプルを用いて炭素安定同位体分析を行い、成果の一部を学会で発表した。④については、当初予定まで進めることができなかったが、調査結果の一部を英語論文として投稿し、受理された。
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