完全に非侵襲な生細胞ライブイメージングシステムの確立を目的とし,(1)計算ゴーストイメージングによる強度計測精度の向上と,(2)強度分布からの位相計測精度向上について検証した. (1)に対して,強度分布の再構成方法を比較した.相関関数と逆アダマール変換を用いる方法をシミュレーションにより比較した.最終的に回復された位相分布の計測精度を評価したところ,振幅変調にアダマールマスクを用いる場合,同等の精度で位相計測が可能であることが明らかとなった.ただし,相関関数を用いる場合が逆アダマール変換を用いる場合に比べて計算時間が10分の1であったため,前者を用いることが適しているといえる. (2)に対して,強度輸送方程式を用いた定量位相イメージングの計測精度向上と,強度輸送方程式以外の方法を用いることの2つの観点から検証した.強度輸送方程式を用いた際に位相計測精度を向上するためには従来,空間光変調器を走査して異なる光軸位置のデフォーカス像群を取得する必要があり,回折トモグラフィに応用した際には膨大な計測時間を要する.そこで本研究では異なる照明角度において取得されたデフォーカス像群から位相分布を回復する手法を提案し,光学実験により位相計測が可能であることを実証した.さらに,強度輸送方程式とは異なる方法として,取得されたデフォーカス像から深層学習を用いて位相計測を行う手法を提案し,光学実験により実証した.シミュレーションにおいて強度輸送方程式を用いた場合と比較した結果,計測精度は向上したが,生体試料に応用する際にいかに大量のデータセットを取得するかが課題であるといえる. 回折トモグラフィとの融合には至らなかったが,その過程で2つの新規手法を提案した.今後は2手法の両面から,回折トモグラフィ導入時の3次元屈折率計測精度を精査することにより当該システムの確立が期待される.
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