研究実績の概要 |
銀河の大規模構造の形成過程である原始銀河団を調べる事は、宇宙の進化を知る上で重要である。特別研究員採用以前に報告者はすばる望遠鏡超広視野カメラ(HSC)により得られた撮像データから赤方偏移z~6-7のLyα輝線銀河(LAE)の天球面上の分布を調べ、この時代に約40領域の原始銀河団候補を検出した。しかし、これら約40領域の原始銀河団候補には銀河のランダムな分布により偶然銀河が密集して検出された領域も含まれると考えられる。そのため、実際にどれだけ確からしい原始銀河団がz~6-7に存在するのか、その有効数字は見積もられていなかった。これを受けて報告者は独自に追加のシミュレーションを行い、上記の40領域の原始銀河団のうちどれだけの数の原始銀河団候補が偶然検出されるかを計算した。その結果、赤方偏移~6-7に約10領域の確からしい原始銀河団が存在することを明らかにした。以上の成果は宇宙の大規模構造の形成・宇宙再電離の電離源の推定といったテーマのみならず、新たな他波長観測のターゲットを提供するという点でも重要である。以上の成果をまとめ査読論文として出版した(Higuchi et al. 2019, The Astrophysical Journal, Volume 879, Issue 1, article id. 28, 15)。 また、上記の探査で発見されたz=6.6に存在する最遠方原始銀河団の候補は分光同定され、これらの成果は共著論文(Harikane et al. 2019, The Astrophysical Journal, Volume 883, Issue 2, article id. 142, 16)として出版されている。報告者はそのHSCによる高赤方偏移の原始銀河探査の研究に関わり、これも2019年度に査読論文1報として出版されている。
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