様々な機能性を示すナノシートはそれぞれ複合化させることで、多機能性ハイブリッド材料を開発することができる。本研究課題では導電性を示す還元酸化グラフェンと強磁性体である水酸化ニッケルナノシートを複合化させることでハイブリッド体による磁気抵抗効果の観測を目指した。 酸化グラフェンと水酸化ニッケルナノシートを液中で複合化し、ろ過することでハイブリッド膜を得ることができた。その後酸化グラフェンを選択的に熱還元することで還元酸化グラフェンと水酸化ニッケルのハイブリッド膜を得た。 還元後のハイブリッド膜の強磁性転移温度を測定すると還元前に比べて転移温度が下がっていた。これは水酸化ニッケルが還元酸化グラフェンの層内に生じる圧力を受けることで水酸化ニッケルの層間距離が小さくなったためである。水酸化ニッケルはシート内にて強磁性相互作用を示すが、シート間では反強磁性相互作用を示す。そのため、層間の反強磁性相互作用が強まったことで水酸化ニッケルの強磁性転移温度が下がったことが示唆された。また、この還元酸化グラフェンの層内圧力は還元温度に依存しており、高い還元温度では還元が進むことで還元酸化グラフェンの層内圧力が大きくなる。この結果から酸化グラフェンの層内には異方性の圧力が生じていることが明らかとなった。次に磁気抵抗効果の測定を行ったが、抵抗値の変化を期待したほど充分な変化が得られなかった。しかし、酸化グラフェンの異方性圧力効果を新たに見出すことができ、今後ナノ材料への応用が期待できる。
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