研究課題/領域番号 |
19J11603
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研究機関 | 徳島大学 |
研究代表者 |
谷口 嘉昭 徳島大学, 大学院先端技術科学教育部, 特別研究員(DC2)
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研究期間 (年度) |
2019-04-25 – 2021-03-31
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キーワード | グラフェン / バイオセンサ / タンパク質 |
研究実績の概要 |
センサデバイスの電子物性を評価する手法としてホール効果測定は有効であるが,グラフェンバイオセンサ応用に関する報告はあまり多くない。一般的なグラフェンバイオセンサの電気的検出は,溶液ゲート型のグラフェン電界効果トランジスタ(GFET)を作製し,伝達特性のシフトを用いて行われている。伝達特性はターゲットの吸着によって移動度が変わらない平行方向のシフトが生じると考えられている。一方で,ホール効果測定ではキャリア散乱による移動度の大きな変化が報告されている。タンパク質滴下時の電気特性の変化を明らかにするために,単結晶かつ欠陥が殆ど無いためグラフェン本来の特性を得られる可能性があるSiC上グラフェンに対してvan der Pauw法を用いたホール効果測定を行った。また、GFETを用いた電気的バイオセンサの研究に関して、現在様々なターゲットの検出が報告されている。しかしながら、検出時に生じる様々なFET特性の変化について未だ明らかになっていない原理も多い。GFETではドレイン電流-ゲート電圧特性を取得した際に、最小点が存在し、左側と右側がそれぞれ正孔と電子の伝導を表す両極性伝導が得られる。この両極性伝導は、電子伝導がほとんど変化せず正孔伝導のみが減少し、検出に大きく影響する場合がある。これは基板にドーピングされたn型グラフェンであることに起因するキャリアの非対称性が影響している可能性があると考えられているが詳細は明らかとなっていない。メインキャリアの伝導がFET特性の変化に与える影響について調べるために、タンパク質をグラフェン表面へ吸着させた際のホール効果測定とFET特性の2つを用いて評価した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初予定していたこれまでとは異なる手法であるvan der Pauw法を用いたホール効果測定によるタンパク質の吸着に対する評価は達成することができ、学術講演会での発表を行うことができた。今回の研究結果を用いて論文を執筆中である。しかしながら、実験方法の最適化が難しかったため想定よりも多くの時間がかかってしまい実験計画に影響してしまった。そのため、予定していたラマン分光測定による光学的な吸着評価は装置の購入は完了したもののまだ実験手法を検討している段階である。
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今後の研究の推進方策 |
本研究では、前述した目的を達成するために、未だ明らかになっていないタンパク質の吸着がグラフェン電界効果トランジスタに与える本質的な影響を調べる必要があると考えた。これまでは電気的測定のみによる評価を行ってきたが、グラフェンの特性評価にはラマン分光スペクトルの変化を解析することが有効である。グラフェン固有のスペクトルはキャリア密度の値によってピーク位置が変化することが知られている。グラフェンのキャリア密度はタンパク質の吸着によって変化するためラマンスペクトルのシフトによる吸着特性評価は可能であると考えられる。そこでラマンスペクトルシフトのタンパク質濃度依存性の取得を試みる。さらに、これらの電気的評価と光学的評価によって得られたデータの相関を調べ、定量的な評価を試みる。加えて、SiC基板上にグラフェンのチャネルを複数作製し、同時に測定できるようなデバイス設計や測定治具の作製を行う。その後複数の修飾分子を用意し、それぞれの単体でのグラフェン上における特性を取得する。最終的に、同時修飾した際の分子毎の被覆率の割合や機能化を比較し最適な修飾条件を導出する。さらに、これらの評価方法に用いた実験から得られたそれぞれのデータをもとに、海外での学会発表及び論文の投稿を行う。
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