本研究課題においては、ラブロック重力理論に含まれる高次曲率項を用いて、高次元時空から自発的におおきな3次元空間を持つ宇宙が自発的に生成されることを示した。余剰次元は大きな慣性質量を持つことにより、等方的な圧力を持つ場合にほとんど静止する一方で、大きな3次元空間は相対論的発展方程式に従うことが示された。余剰次元の大きな慣性質量は、大きな高次曲率項の係数を要するため、ナイーブには高次曲率項からの寄与によって重力波の発展方程式が大きく変化してしまうことが懸念されたが、本研究での計算によってその寄与は非常に小さいことが判り、相対論と同じ発展方程式に従うとみなせる。この自発的コンパクト化によって、余剰次元方向の自由度は零質量の粒子として観測されるはずであるが、重力との結合がプランクスケールを超えるスケールにより抑制されるため、それら粒子の重力的生成は非常に小さいことが期待される。本研究によって、3次以上曲率項はコンパクト化に寄与するが、2次の曲率項は寄与しないことが明らかとなった。しかしこの2次項は、初期宇宙で宇宙定数として振る舞うため、初期宇宙のインフレーションを引き起こし得ることがわかった。2次の曲率項は4次元時空においては全微分となるため、余剰次元を持たない宇宙ではその発展に影響することができない。これは、4次元時空にはない、高次元時空の存在が本質的に重要となる「高次曲率項インフレーション」の可能性を示唆する。
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