研究課題/領域番号 |
19J11677
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
林田 朋樹 大阪大学, 理学研究科, 特別研究員(DC2)
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研究期間 (年度) |
2019-04-25 – 2021-03-31
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キーワード | マイクロポア / 四重極電極 |
研究実績の概要 |
令和元年度は四重極電極組込ポアデバイスを用いた交流電圧印加時の1粒子トラップ・検出の原理実証として表面に官能基が修飾されていない表面ζ電位の低い非修飾ポリスチレン粒子の誘電泳動によるトラップ及びポア構造を用いたイオン電流計測を行った。粒子トラップ用の四重極電極をマイクロスケールで作製し、四重極電極の中心に粒子検出用のマイクロポアを作製した。まず、白金四重極電極への交流電圧印加がポアへのイオン輸送を反映するイオン電流変化に対してどのような影響があるか検証した。交流電圧印加の瞬間、スパイク状のイオン電流変化が観測されたが、その後電流値は定常状態に戻り、交流電圧印加後も問題なくイオン電流計測が可能なことが確認された。次に非修飾ポリスチレン粒子の計測を行い、交流電圧の印加によって四重極電極の中心にトラップされた粒子のポア通過によるイオン電流シグナルを確認できた。四重極電極への交流電圧印加に伴う電場の形成及びポアを検体粒子が通過する際のイオン電流シグナルは有限要素法(COMSOL)によってシミュレーションを行い、実験結果と照合した。また、電極及びポア構造の微細加工に加えて二酸化ケイ素薄膜の積層を行うことにより基板及び電極表面への検体粒子の非特異的吸着を防ぎ、粒子トラップ用の四重極電極、粒子検出用のポア構造を複合したデバイスの作製に成功した。これにより、四重極電極が形成する交流電場内に検体粒子を誘電泳動的にトラップした状態で、ポア構造を用いて電気泳動的に単一粒子計測が可能であると考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の目的は、ポアデバイスによる1粒子計測法に1粒子形状解析機能を付与することで計測の高精度化を図ることである。現在までに、マイクロスケールで四重極電極組込ポアデバイスを作製し、1粒子トラップ及び1粒子計測系を確立した。通常、官能基修飾され表面ζ電位の大きい粒子をポア計測に用いるが、表面の帯電状態に依存しない誘電泳動法を利用することで表面ζ電位の低い粒子をポア上部にトラップし、ポア構造を用いて計測することが可能となった。当初の計画通り形状解析を行うための原理実証は進んでおり、おおむね順調に研究が進展していると言える。
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今後の研究の推進方策 |
サイズと形状が既知の粒子(例:雪だるま状の粒子)に関して1粒子のトラップ及び当該粒子のポア通過時の速度を遅くした状態でのイオン電流計測を行う。イオン電流情報の取得→トラップを繰り返すことで1つの粒子に対して複数のイオン電流シグナル情報を取得し、平均化したデータから粒子形状情報を得る。また、四重極電極及びポア構造をナノスケールにダウンサイズしたデバイスを作製し、数十~数百 nmスケールの合成ナノ粒子の形状解析を行う。
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