研究課題/領域番号 |
19J11759
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
尾松 大和 京都大学, 理学研究科, 特別研究員(DC2)
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研究期間 (年度) |
2019-04-25 – 2021-03-31
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キーワード | ヘキサシラベンゼン / 環状オリゴシラン / ヘキサシラシクロヘキサン / 官能基変換 |
研究実績の概要 |
含ケイ素多重結合化合物は炭素類縁体に比べて特異な性質の発現が期待されるため、その電子的性質に興味が持たれてきたが、非常に反応活性であり、その合成・単離は困難とされていた。しかし近年、自己多量化を防ぐかさ高い置換基による速度論的安定化の手法の確立により、室温で安定な化合物として単離され、その特異的な構造・性質が明らかになってきている。そうした中で、環状π共役化合物(芳香族化合物)の基本ユニットであるベンゼンの完全ケイ素置換体「ヘキサシラベンゼン」はπ共役化合物として新規物性の発現が期待できる。しかし、従来の合成アプローチは環形成・多重結合形成を同時に行う手法であり、単環のケイ素6員環骨格形成そのものが達成できていなかった。そこで我々は、環状骨格形成と多重結合形成を段階的に行うことによって上述の問題を解決できると考え、ヘキサシラベンゼンの合成・単離およびその構造・性質の解明を目的とした研究に取り組んだ。 既に筆者らは、立体保護基が導入可能と考えられるヘキサシラシクロヘキサン類の効率的な合成を達成しており、今回、合成した種々のヘキサシラシクロヘキサン類に対し、立体保護基を導入する試みを行った。その結果、ケイ素―ケイ素結合切断が優先的に起こることから、六員環骨格形成後の立体保護基導入が非常に困難であることが分かった。このような実験的事実をもとに、次にケイ素上に予め立体保護基を導入したケイ素源を用いて、ヘキサシラベンゼンの前駆体となるヘキサシラシクロヘキサン類の合成に取り組んだ。その結果、六員環・五員環・四員環ケイ素化合物がそれぞれ立体異性体の混合物として単離でき、分離精製の後それらを構造的・分光学的に同定することに成功した。特に、アリール基が4-メトキシフェニル基の場合では、定量的な官能基変換反応が可能であり、ヘキサシラベンゼン合成における良い中間体になりうることが明らかになった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の計画は、合成後半で立体保護基のチューニングが可能になることを期待した活性なヘキサシラシクロヘキサン類への立体保護基導入によって、ヘキサシラベンゼン前駆体を合成する予定であった。しかし、様々な条件検討の結果、ケイ素六員環骨格を保持した形での立体保護基導入が困難であることが明らかになった。そこで、速度論的安定化に必要な立体保護基および後に活性な置換基へと変換可能なアリール基をケイ素上に予め導入したケイ素単核ユニットを用いることによって、目的の立体保護基を有する環状オリゴシラン類の合成に成功した。また、得られた化合物のアリール基を定量的に活性なハロゲノ基へと変換することにも成功した。今回得られた環状オリゴシラン類は、ヘキサシラベンゼンを合成する上での有用な中間体として利用可能であると期待できる。
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今後の研究の推進方策 |
本年度の研究で得られた環状オリゴシラン類を用い、各種金属還元剤を作用させることで、ヘキサシラベンゼンの合成に取り組む。また、環サイズの異なる環状オリゴシラン類は新たなケイ素クラスターや新規な含ケイ素不飽和結合化学種への誘導が可能であると考えられるため、その反応性や置換基変換能の解明にも取り組む予定である。
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