研究課題/領域番号 |
19J11791
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研究機関 | 金沢大学 |
研究代表者 |
中川 達貴 金沢大学, 医薬保健学総合研究科, 特別研究員(DC2)
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研究期間 (年度) |
2019-04-25 – 2021-03-31
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キーワード | 糖尿病 / 下部尿路 / 脊髄 / 排尿障害 |
研究実績の概要 |
近年、日本においては糖尿病に伴う排尿障害が問題視されている。糖尿性排尿障害の患者数は、糖尿病患者数の8割に及んでいる。この糖尿病性排尿障害は、糖尿病性神経障害による末梢神経の伝達障害によることがこれまでに知られている。しかし、どのような末梢神経回路が障害されるのかは不明な点が多く、障害される回路の究明と新規治療薬・治療法の開発は急務であった。しかし、健常時に蓄尿と排尿を繰り返す排尿活動中にどのような神経活動の行われているかが未だ明らかでなく、病態時における神経活動の異常が十分に明らかになっていなかった。このことが、排尿障害の有効な治療法が確立しない原因であると申請者は考えた。従って、本年度の研究は、健常時の脊髄後角における排尿活動中の下部尿路系からの感覚受容機構を明らかにすることを本研究の目的とした。 実験では、麻酔下ラット(in vivo)に排尿活動を惹起させ、脊髄神経活動と膀胱内圧を同時に記録するし、排尿活動に同期する神経応答および神経細胞の同定を行った。その結果、その結果、尿排泄時に異なるタイムコースで発火する2種類の神経細胞群を発見した。一つは、内圧がピークに達すると排尿が開始され、膀胱頚開閉により内圧の振動(オシレーション)発生中にのみ活動電位を生じるUrethral-responsive neuronと、もう一方はオシレーション以前から発火するBladder-responsive neuronを同定した。さらに、Urethral-responsive neuronは外尿道に電気刺激を加えると長い潜時の後に活動電位を示した。 以上の結果は、脊髄後角においては排尿活動に同期して活動する2種類の神経細胞がいることを明らかにした。また、Urethral-responsive neuronは尿道感覚を受容していることが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度の研究で明らかになった「脊髄後角においては排尿活動に同期して活動する2種類の神経細胞」は当初の予定していたin vivo パッチクランプ記録による解析が技術的に困難であったため、予想していた解析まで及ばなかったものの十分な結果であった。本研究の結果から、健常時の脊髄後角における排尿活動中の下部尿路系からの感覚受容機構を明らかになった。これらの結果は、次の糖尿病性排尿障害の発症メカニズム解明につながると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
本年度までの研究から、脊髄後角においては排尿活動に同期して活動する2種類の神経細胞は、排尿活動に重要であることが明らかになった。今後は、糖尿病モデルを用いてこれらの脊髄神経細胞がどのように変化するか検討し、糖尿病性排尿障害の解明に努める。
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