研究課題/領域番号 |
19J11798
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
世良 透 京都大学, 理学研究科, 特別研究員(DC2)
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研究期間 (年度) |
2019-04-25 – 2021-03-31
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キーワード | 間欠力学系 / 作用素更新理論 / 極限定理 / 確率過程 / 拡散過程 |
研究実績の概要 |
間欠力学系とは,中立不動点を持つ区分的拡大写像により生成される離散力学系を指す.間欠力学系の軌道は,長時間に渡り中立不動点に密接するという安定状態と,短時間だけ中立不動点から離れるという不安定状態を持つ.以下では適当なランダム初期点を置いたときの間欠力学系の長時間挙動について考察する.
今年度の研究では,マルチレイ上の拡散過程の解析手法である周遊路の点過程的解析の類推に基づき,間欠力学系の軌道を「不安定状態が一度生じてから再び生じるまでの期間」毎に分解しその統計性質を点過程的に解析した.その際に再帰写像の転送作用素に関するスペクトル・ギャップを利用した.更にこの点過程的解析の応用として,間欠力学系の中立不動点近傍および遠方への滞在時間の時間発展を考察し,そのスケーリングに関する関数型極限定理を得た.極限過程として現れるのは,マルチレイ上を走る歪Bessel拡散過程の各レイへの滞在時間および原点局所時間である. 以上に述べた結果は査読付き単著論文として学術雑誌「Nonlinearity」に掲載された.
またテルアビブ大学に2度・合計2ヶ月滞在しJon Aaronson名誉教授との共同研究によって,間欠力学系に対しピン留め条件下での不安定状態の生起回数,そのスケーリングに関する極限定理を得た.スケール極限として現れるのは,「観測終了時刻に原点にいる」というピン留め条件を課したBessel過程の原点局所時間である.証明のために作用素更新理論を活用した.より詳しく言えば再帰写像の転送作用素に対する摂動解析,そこから導かれる再帰時刻の局所極限定理を利用した.以上に述べた結果は,学術雑誌へ投稿する準備を進めている.その他ウィーン大学に2週間滞在しRoland Zweimuller准教授と間欠力学系の長時間挙動について研究討論を行った.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
間欠力学系の長時間挙動について点過程論的手法による解析が計画以上に進んだため.またJon Aaronson氏との共同研究によって作用素更新理論に関する理解が進み,その応用により「ピン留め条件下の間欠力学系」の長時間挙動についても着実に研究が進んでいるため.
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今後の研究の推進方策 |
引き続きJon Aaronson氏との共同研究を推し進め,ピン留め条件下での間欠力学系の不安定状態生起回数についての関数型極限定理を定式化し,得られた結果を学術雑誌に投稿する.また作用素更新理論の発展とそれに基づく間欠力学系の長時間挙動の更なる解析を目指し研究を進めていく.
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