ALK遺伝子F1174L変異配列に特異的に結合することができる化合物であるCCC-003と、ALK遺伝子上に結合部位をもたないALKミスマッチ化合物を設計・合成した。ALK F1174L変異をもつ各種神経芽腫由来細胞株(SH-SY5Y、Kelly)におけるIC50値をCCC-003とミスマッチ化合物とで比較し、ALK遺伝子発現抑制効果をqPCR法およびWestern blot法により検討したところ、ALK変異細胞におけるCCC-003のIC50値はSH-SY5Y細胞が0.5 nM、Kelly細胞が1.0 nMであるのに対し、ミスマッチ化合物のIC50値はそれぞれ5.5 nMおよび15.8 nMと高く、ALK発現抑制効果も弱いことが明らかとなった。次に、CCC-003による細胞死はフローサイトメトリーおよびWestern blot法により検討したところ、CCC-003を処理したALK変異細胞ではアポトーシスの誘導が顕著に認められる(P < 0.001)が、ミスマッチ化合物による細胞死は限定的であった。また、SH-SY5Y細胞による担癌マウスモデルを作成し、CCC-003投与による腫瘍増殖抑制効果を検討したところ、副作用は認めず、腫瘍増殖を有意に抑制した(P < 0.05)。さらに、腫瘍組織における細胞死をcleaved caspase 3に対する免疫染色により検討したところ、CCC-003投与後の腫瘍組織においてアポトーシスの誘導が確認された。以上の結果から、CCC-003は他のALK阻害薬とは異なる作用機序の抗腫瘍効果を示すことから、チロシンキナーゼ阻害薬の耐性の問題を解決する画期的な治療薬となる可能性が示された。
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