研究課題/領域番号 |
19J11883
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研究機関 | 早稲田大学 |
研究代表者 |
加藤 丈太郎 早稲田大学, 国際学術院(アジア太平洋研究科), 特別研究員(DC2)
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研究期間 (年度) |
2019-04-25 – 2021-03-31
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キーワード | 非正規移民 / 技能実習生 / 難民 / 出入国在留管理制度 / 不法性の生産 / 移住インフラ / 移住産業 / 居住権 |
研究実績の概要 |
日本における非正規移民への追加でのインタビュー調査、既に調査を行った者へのフォローアップを行った。最終的に38名のデータを収集した。2018年8月から2019年2月に米国で文献研究ならびに非正規移民からのデータ収集を行っていた。33名のデータが集まり、2019年度はデータをテープ起こしを行い、分析を進めた。 日本における調査結果は、2019年5月に査読論文「「不法」と共に生きる―非正規滞在者が日本で暮らすことを可能としている要因は何か―」、同年9月に査読論文「ベトナム人非正規滞在者・留学生・技能実習生へのケーススタディ―ベトナム人を『合法』と『不法』に分かつのは何か」として出版した。同年12月にはWorking Paper"The Nature of ‘Illegal’ Migration in Japan and the United Kingdom: The Impact of Attitudes towards Migrants, Social Cohesion and Future Challenges"を英国の研究者と共著で出版した。Society for East Asia Anthropology、日本社会学会、国際開発学会で学会発表を行った。以上から、なぜ移民が「不法」になるのか、何が非正規移民の「不法性」を維持させるのかを問うてきた。 米国における調査結果は、移民政策学会で学会発表を行った後、2020年2月に「「アメリカにおける非正規移民1.5世をめぐる政治と市民社会」万城目正雄・川村千鶴子編著『インタラクティブゼミナール 新しい多文化社会論―共に拓く共創・協働の時代』pp.221-224)として出版した。不安定な在留状況の中で培われる非正規移民の帰属意識の多様性、正規化を求める運動への意識が芽生える過程を描きだした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
査読論文掲載2本、学会発表4回(うち1回は国際学会)、国際ワークショップ発表4回、書籍2冊(1章を執筆)という結果となった。データ収集・分析を遅滞なく進め、2020年1月に博士論文を研究科に提出し、同年3月に口述試験に合格した。 博士論文については、2019年7月までは非正規移民が置かれている日米を比較することを目指していた。しかし、中間発表会において、日本のデータのみで論文としてまとめた方が良いと複数の審査委員から指摘を受けたため、博士論文でのデータ分析は日本に絞ることにした。ただし、米国渡航中に収集した文献調査の成果を博士論文にも反映した。 米国調査については、2019年5月の学会発表を経て、2020年2月に最初の成果として書籍(1章を担当)で出版した。 研究成果を多く挙げる一方、日米の比較については博士論文最終提出後の課題として残されたため、 「(2)おおむね順調に進展している。」という自己評価にした。
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今後の研究の推進方策 |
2020年度は、特別研究員奨励費を元に、8月に米国ニューヨークに再度渡航し、既に調査をした非正規移民のフォローアップを行う計画を立てていた。しかし、COVID19の拡大により、年度内にニューヨークへ渡航するのは極めて困難となった。よって、今年度は、新たな質的調査を行う前段階として文献調査に力を入れる。また、ここまで蓄積しているデータに基づき、論文執筆(英語を含む)を進める。さらに、質的調査に着手する。当初計画していた米国調査についてはオンラインでのフォローアップを試みる。 日米を比較する中で、非正規移民をめぐる課題が日本と米国では異なる点が浮かび上がってきた。 米国では非正規移民をめぐる課題が多世代に渡るのに対し、日本では世代間での課題の継承はさほどなく、むしろ、技能実習制度等で来日した若者が新たに「不法」になっており、深刻な状況に置かれているという傾向が浮かび上がってきた。日本において非正規移民の20%を生み出すに至った技能実習制度を取り巻く課題について研究を行う。技能実習生、失踪者、企業、通訳等へインタビュー調査を行う中から課題を明らかにする。なお、技能実習制度の延長に設計されている特定技能制度も視野に入れる。技能実習生の多くは地方で実習を行っている。本調査も地方に出向くことを想定している。ただし、緊急事態宣言の出方を見ながら、調査計画は柔軟に立てていく。 米国での調査対象者の多くは1.5世の非正規移民であった。日米間での比較を実現するために、日本においても非正規移民1.5世、2世への質的調査を視野に入れる。緊急事態宣言の出方を見ながら、彼/彼女らへの接触を可能とするコミュニティへの訪問、予備調査に年度内に着手したい。
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