研究課題/領域番号 |
19J11898
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
渡辺 亮 東北大学, 文学研究科, 特別研究員(DC2)
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研究期間 (年度) |
2019-04-25 – 2021-03-31
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キーワード | インド密教 / 儀礼 / チャクラサンヴァラタントラ / クリシュナアーチャーリヤ / 究竟次第 / グヒヤタットヴァプラカーシャ |
研究実績の概要 |
今年度における主な研究成果は次の2点である: (1)本研究課題の「錯綜したインド密教史を儀礼文献に基づいて解明すること」という最終的な目標を達成するため、当初の研究計画に沿って、サンヴァラ系密教の相承者であるクリシュナアーチャーリヤに帰される儀礼文献のうち、梵文原典の散逸する『グヒヤタットヴァプラカーシャ』に関して、係る資料の整定を行った。同儀軌は、複数の聖典類に並行箇所が見出され、文献史の理解に資する重要な情報が含まれているにも拘らず、国内外を問わず殆ど研究が行われていない。そのような状況を打開すべく、本年度では議論の前提となる根本的資料の整定、即ちチベット大蔵経のデルゲ版・北京版・ナルタン版・チョーネ版の4版を用いたチベット語訳の校訂作業、及び関連する聖典より梵文断片を回収する作業を主に進めた。後者について並行箇所の多くは『サンプタタントラ』に見出されるが、同聖典を考察する上で根幹をなす写本データを資料調査によって入手し得たことにより作業が計画通りに進捗した。その成果は「Krsnacarya著*Guhyatattvaprakasaの原典研究」と題して9月に開催された日本印度学仏教学会(第70回学術大会)において発表し、また同学会の学術雑誌(『印度学仏教学研究』第68巻第2号)に掲載することができた。これは、新資料の掘り起こしという意味でもこれまで等閑に付されてきた同儀軌の研究の進展に大いに寄与し得ると思われる。 (2)一方、クリシュナアーチャーリヤという人物を多面的に考究する過程で彼の思想をより詳細に分析する必要性を感じたため、彼の思想形成を理解する上で重要となる儀礼文献『オーリチャトゥシュタヤ』の考察を本年度の計画に加え、そのチベット語訳の校訂及び読解作業を行った。これにより課題全体の深化が図られると考える。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
テキスト研究の面では当初計画に沿った成果が得られており、また日本印度学仏教学会における口頭発表、及びそれに基づく『印度学仏教学研究』への論文寄稿とも然るべき公表を成し得たため、おおむね順調に進捗していると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
上記の通り、今年度においてほぼ計画通りに作業・考察を進めることができたため、今後は更にテキストの精緻化を図り、また聖典類との関連性を検討・分析することでクリシュナアーチャーリヤの伝統を明確化させ、得られた結果をもとにインド密教史の変遷及び展開の具体像を明示化していきたい。
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