Massive MIMO(Multi-Input Multi-Output)では従来の周波数に比べ比較的高い周波数帯(SHF帯)が利用される.SHF帯は従来用いられてきたUHF帯に比べ伝搬損失が大きく,その伝搬特性が異なるため,これまでのシステムの評価で用いられてきた伝搬モデルをそのまま流用することは適切ではない. SHF帯の伝搬を解析し,新たな伝搬モデルを設計する必要がある.既に3GPP(3rd Generation Partnership Project)で提案されているSHF帯でも適用可能な伝搬モデルは存在するが,構成が非常に複雑で,その特性が従来の伝搬モデルであるレイリーフェージングに近いため,より簡易で実際の伝搬環境に近い伝搬モデルの構築は必須である.新たな伝搬モデルを提案するにあたり,申請者が着目したのは電波のパスのかたまり(クラスタ)の数である. 高SHF帯のように比較的高い周波数になるとクラスタ数が減少することをシミュレーションにより明らかにした.また,中心周波数27.8GHzのチャネルサウンダを用い,所属大学のキャンパス内で電波伝搬測定を行うことで,実際の伝搬環境で得られる遅延-到来方向特性を導出した.この測定結果から,クラスタ数やクラスタの角度広がり,クラスタ間の電力差などのパラメータを導出し,いくつかのクラスタからなる新たな伝搬モデルの提案と評価を行い有効性を示した.
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