成長中の結晶表面における吸着原子密度の計算を可能とする計算手法を提案し、MOVPE法により成長中のGaNとAlNの極性面に適用した。解析の結果、GaN(0001)とAlN(0001)では表面のほとんどをNが吸着しており、それに対してGaとAlは少数であることがわかった。一方で(000-1)面における表面状態は大きく異なっている。 GaN(000-1)においては表面をHが覆っており、GaとNの密度は非常に少ないことがわかった。実験的にGaN(000-1)の核生成頻度が非常に少なく成長速度が遅いことがわかっており、その原因はGaとNの密度が非常に低いことであると考えられる。低温バッファ層を用いた転位低減を行うには成長初期に意図的に三次元的に成長させる必要がある。GaN(000-1)においてGaとNの吸着原子密度を高めて核生成頻度を増加させるためには水素分圧を減少させることが有効であることが明らかとなった。 AlN(000-1)では1MLのAlが吸着し、その上に0.25MLのNが吸着した構造が支配的となる。実験的にはAlN(000-1)の成長は三次元的な表面になりやすく、この原因はAlとNの密度が非常に高いことであると考えられる。平坦な結晶を成長させるためにはAlとNの密度を低下させることが必要である。解析の結果、成長温度を高くする、水素分圧を高くする、AlとNH3の分圧を小さくするとAlとNの吸着原子密度を低下させることができることが明らかとなった。
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