研究課題/領域番号 |
19J12002
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
居石 卓也 九州大学, 医学系学府, 特別研究員(DC2)
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研究期間 (年度) |
2019-04-25 – 2021-03-31
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キーワード | GRK5 / Amlexanox / Osteoarthritis |
研究実績の概要 |
Gタンパク質共役受容体キナーゼ5(GRK5)が、NF-κB経路による異化反応を介した軟骨の変性を制御すること、よってGRK5はOA治療の標的となり得ることを明らかにし、関節症研究のトップジャーナルであるArthritis and Rheumatology(PMID: 31696655)に論文アクセプトされた。 In vitroにおいて、アムレキサノクスの10 µMおよび100 µMの濃度でヒト軟骨細胞を72時間培養しても、細胞増殖に有意な影響を与えなかった。アムレキサノクスは、ヒト軟骨細胞のLPS刺激下でのIL6、MMP13、ADAMTS4、ADAMTS5、およびiNOSの遺伝子発現を大幅に減衰させ、NF-κB転写活性を有意に抑制した。ヒト軟骨細胞においてGRK5を過剰発現させると、IL6、MMP13、ADAMTS4、ADAMTS5、およびiNOSの遺伝子発現が有意に増加するが、これらの増加はアムレキサノクス投与により有意に抑制された。同様に、GRK5の過剰発現によって亢進したNF-κBの転写活性は、アムレキサノクス投与によって抑制された。In vivoにおいて、OAマウスモデルでの軟骨変性に対する、アムレキサノクス関節内投与効果を調べた。100μMのアムレキサノクスを投与した膝関節は、コントロール群よりも軟骨変性スコアが有意に低かった。アムレキサノクス投与群のTUNEL陽性細胞率は、生理食塩水群よりも有意に低く、アポトーシスを抑制していた。さらに、アムレキサノクスの関節内注射は、コントロール群に比し、関節軟骨におけるIL6およびMMP13を発現する細胞数を有意に減少させた。実用化に向けての最新の実験結果では、in vitroにおいて、アムレキサノクスとヒアルロン酸を同時にヒト軟骨細胞に作用させるとそれぞれの単体よりも有意に上記の NF-κBを介した異化因子が抑制できた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
GRK5阻害剤であるamlexanoxのin vitro、in vivoの検証は予定通り行うことができ、論文に形として残すことができた点は評価できると考える。しかし、こちらも予定していたC/EBPβとGRK5との関連の検証というテーマに関しては、まだ思ったように結果が出ていないため、おおむね順調であるという評価とした。
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今後の研究の推進方策 |
1)In vitro試験 ①脂溶性のアムレキサノクスと水溶性のヒアルロン酸の最適な混合を検討する。現在までは、DMSOにアムレキサノクスを一旦溶解しているが、その他のヒトへの投与可能な溶媒を用いて検討する。②アムレキサノクスの濃度とヒアルロン酸の分子量の組み合わせを複数通り作成し、ヒト軟骨細胞における毒性・有効性試験を行う。 2)In vivo試験 ①候補の組み合わせを、より大型の動物モデルであるウサギのOAモデルに関節内投与し、組織学的な有効性試験を行う。②従来のヒアルロン酸単体とステロイド単体に対する優位性試験のため、マウスOAモデルを用いて、組織学的有効性試験と疼痛に対する有効性 試験を行う。
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