昨年度は、ネムリユスリカの最小プロモーターについて論文化、および最小プロモーターを用いたレポーターベクターをPv11細胞へ導入することで、STARR-seqが行えるかを検討した。 Pv11細胞の乾燥処理過程では、heat shock factor 1(HSF1)の発現が上昇し、乾燥耐性に寄与する遺伝子群のプロモーター上のheat shock element(HSE)に結合することで、転写促進を行うことがわかっている。そこで、HSE、最小プロモーターおよびルシフェラーゼを組み込んだ、レポーターベクターを作成した。このベクターをPv11細胞へ導入後、乾燥処理を行い、ルシフェラーゼ活性が上昇するかを検討した。その結果、レポーターベクターを導入する際のエレクトロポーレーションのダメージで、HSF1が活性化し、乾燥処理前からルシフェラーゼの活性が上がってしまった。一過的にレポーターベクター群を導入して行う、従来のSTARR-seqがPv11細胞では適していないことが判明した。したがってSTARR-seqをPv11細胞で行うため、レポーターの発現ユニットの部分を、ゲノム上にあらかじめ挿入したPv11細胞を準備する必要があることが判明した。 そこで、乾燥耐性に影響を与えないゲノムの箇所(Safe harbor: SH)を探し出し、そこに発現ユニットを挿入することにした。GFPの発現ユニットがゲノムにランダムに挿入された、かつ、乾燥耐性能を維持しているPv11細胞を用いて、GFPの発現ユニットが挿入されている箇所の特定を行った。その結果、4箇所のSH候補を得た。このSH候補の1箇所に対して、実際にSHとして機能するかを検討した。その結果、SHとして利用できることがわかり、Pv11細胞におけるSHを同定した。
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