今年度は以下の研究を進行し、その成果を学会発表するとともに論文執筆に取り組んだ。 (1)ゲル微粒子高濃縮懸濁液の降伏挙動の機構の解明と制御:ゲル微粒子懸濁液は高濃縮したペーストの降伏挙動の機構は未解明であり,γcの制御はいまだ達成できていなかった。我々はγcが異なる異種のゲル微粒子(N とNM)ペーストを混合し,混合比を変えることで混合ペーストのγcが制御可能であることを実証した。さらに、極端に粒径差がある混合ペーストでは、大きい粒子の隙間に小さい粒子が入り込むことで、二段階降伏挙動を発見した。これらの結果については、国際学会で発表するとともに、原著論文として学術誌に投稿中である。 (2)温度応答性ゲル微粒子の超高密充填によるマクロゲルの機能性と力学物性の創出:優れた力学物性と高い温度応答速度を両立した機能性ゲルを作製するために,温度応答性ゲル微粒子を超高密充填したマクロゲルの作製と疎の力学物性の解明を行った。検討の結果、粒子を高充填することで単純なフィラーとしての充填効果を越える力学補強効果が発現することを発見した。 (3)温度応答性ゲル微粒子の粘弾性への電荷の影響の解明:温度応答性高分子からなるゲル微粒子は、体積相転移以上の収縮相で疎水性支配に変化し、粒子間に引力が働く。一方で、斥力相互作用である粒子表面の電荷反発は粒子の収縮により増加する。その結果、収縮相でのゲル微粒子懸濁液の分散凝集状態とその物性は粒子によって変化し、巨視的な沈殿、コロイドゲルなどの多様な状態を示す。しかし、粒子間相互作用と分散・凝集状態の相関は明らかになっていなかった。我々は,電荷を少量共重合したゲル微粒子を用いて、pHやイオン強度によって電荷反発の強さを制御することで、粒子間相互作用と力学物性の相関を明らかにした。これらの成果は、国内学会で発表するとともに、原著論文として国際的な学術雑誌に掲載された。
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