研究課題
本研究の目的は、T*構造銅酸化物を対象に頂点酸素位置の局所構造変化が系全体のスピン相関に与える影響と超伝導発現との関係性を微視的に明らかにすることである。そこで、本研究では、酸素アニールによる磁性の変化と超伝導発現の関係を系統的に調べてきた。今年度は、以下の5つの進展があった。1.T*構造La1-x/2Eu1-x/2SrxCuO4に対して行ったミュオンスピン緩和実験、及び、電気抵抗率と磁化率測定の解析を行い、磁性に対する酸素アニール効果と超伝導発現の関係を明らかにした。本物質の磁気・超伝導相図を初めて明らかにした。2.溶媒移動浮遊帯域融解法によりT*構造Nd1.6-xCexSr0.4CuO4の単結晶育成を試みた。融帯を長時間安定させるため、原料棒の焼結方法を改善し、5 mm角程度の大きさの単結晶を育成することに成功した。3.T*構造La1-x/2Eu1-x/2SrxCuO4に対するO K端X線吸収分光実験を行った。酸素アニールによりホール量が増大する事、ホール量で整理した磁気・超伝導相図はホールドープ型T構造La2-xSrxCuO4の相図とよく類似することを明らかにした。4.T*構造La1-x/2Eu1-x/2SrxCuO4の磁性に対する不純物置換効果をミュオンスピン緩和実験と磁化率測定により調べた。CuをZnやFeで置換した試料では、磁性が安定化した。T*構造銅酸化物においてもスピンゆらぎが超伝導発現に重要な役割を果たしていることを明らかにした。5.T*構造La1-x/2Eu1-x/2SrxCuO4(x = 0.18)の磁性に対するF置換効果を調べた。F置換により電子ドープを施し、より低ドープ領域の磁性をミュオンスピン緩和実験により探索した。その結果、F置換によりスピン相関の発達する温度が大幅に上昇した。これは、T*構造母物質の基底状態解明に繋がる重要な結果である。
翌年度、交付申請を辞退するため、記入しない。
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すべて 雑誌論文 (3件) (うち国際共著 1件、 査読あり 3件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (13件) (うち国際学会 4件)
J. Phys. Soc. Jpn.
巻: 未決定 ページ: 未決定
巻: 88 ページ: 084709
10.7566/JPSJ.88.084709
Nat. Commun.
巻: 10 ページ: 3269
10.1038/s41467-019-11167-z