研究課題
Panton-Valentine leukocidin (PVL) を産生するメチシリン耐性黄色ブドウ球菌 (PVL陽性MRSA) は、これまでに複数の遺伝子型株が確認されている。申請者は、複数種のPVL陽性MRSAを用いて、その病原性を比較、解析を行った。(1) マウスの皮膚疾患モデルにおける病原性比較:マウスを用いて、皮膚疾患モデルを作成し、PVL陽性MRSAの遺伝子型毎に病原性を比較した。その結果、Sequence type (ST) 8のUSA300や、ST30のSouthwest Pacific cloneが高い増殖率を示した。さらに、マウスの膿瘍内におけるサイトカイン(IL-1β、IL-6、TNFα)の量をELISAで測定したところ、USA300やST30の株では、IL-1βやIL-6の産生量がST59よりも高い値を示した。一方、TNFαはST59の株が最も高かった。(2) バイオフィルム形成能の違い:生体内におけるバイオフィルムの形成には、組織への接着が必要となる。そこで、生体内に豊富に存在するコラーゲンに着目し、PVL陽性MRSAのコラーゲン上での挙動を解析した。その結果、ST22、ST30、ST772のクローンが有意にコラーゲン結合能が高かった。これらの株は、いずれもcna というコラーゲン結合タンパクをコードする遺伝子を保有していた。コラーゲン上にバイオフィルムを形成させたところ、cna 保有株で、コラーゲン非存在時に比べ高いバイオフィルム形成能を示した。特に、ST30の株でバイオフィルム形成能の上昇が大きかった。上記の結果より、PVL陽性MRSAの遺伝子方毎に病原性に明らかな差があることが示唆された。今後、この原因を明らかにし、ヒトの皮膚疾患との関連を解明する必要がある。
翌年度、交付申請を辞退するため、記入しない。
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すべて 雑誌論文 (4件) (うち査読あり 4件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (2件) (うち国際学会 1件)
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