研究課題/領域番号 |
19J12254
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
秋津 一之 東京大学, 理学系研究科, 特別研究員(DC2)
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研究期間 (年度) |
2019-04-25 – 2021-03-31
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キーワード | 宇宙大規模構造 / 非線形重力進化 / Super-sample effect / 宇宙論的N体シミュレーション |
研究実績の概要 |
本年度は、スカラー型摂動の長波長ゆらぎと短波長ゆらぎ間の非線形モードカップリングが生む非等方シグナルについての研究を行った。特に、銀河サーベイなどの有限観測領域を超える長波長ゆらぎ(Super-sample mode)が、重力による非線形モードカップリングによって短波長ゆらぎに及ぼす非等方な影響について、摂動論、数値シミュレーション双方を用いて研究を進めた。 一つは、以前私が行った摂動論に基づく結果を応用したもので、長波長潮汐力場が短波長ゆらぎに残す非等方シグナルを他の宇宙論的非等方シグナル(Redshift-space distortion:RSD, Alcock-Paczynski test:AP test)から観測的に区別するためにBipolar-spherical harmonic basisの活用を提案し、この手法を用いることで実際将来観測において有限観測領域を超える長波長潮汐力場の痕跡を取り出せる可能性を指摘した。 また、長波長潮汐力場の影響を取り入れた宇宙論的N体シミュレーションの開発も行った。通常、宇宙論的N体シミュレーションではFast Fourier Transformを利用するため周期境界条件が課され、シミュレーション体積を超える長波長ゆらぎの影響は無視されてしまっている。長波長ゆらぎの等方成分による影響をシミュレーションで調べる手法については既に確立されていたが(separate universe simulation)、長波長ゆらぎ非等方成分は宇宙の等方性という原理的仮定を破ってしまうために、その効果をシミュレーションに取り入れる手法は確立されていなかった。私は、バックグラウンドの宇宙膨張を非等方にするシミュレーションコードを開発することで、この問題にアプローチした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
長波長ゆらぎの非等方成分による効果を取り入れた宇宙論的N体シミュレーションの開発が順調に進んでいるため。
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今後の研究の推進方策 |
開発中の非等方膨張シミュレーションを用いることで、長波長潮汐力場が種々の宇宙論的観測量に与える影響について包括的に調べる。具体的には、銀河・ハローの3次元空間分布に対する影響、銀河・ハローの形状相関に対する影響等を非線形スケールまで正しく理解する。
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