Phaedra1は、機能未同定のセリン型プロテアーゼである。RNAseq解析によって、致死的ストレスを受けた昆虫において、発現量が急増する遺伝子として同定した。私は、Phaedra1は、個体死の誘導に関わっている遺伝子であると考え、実験を進めてきた。本年度は、キイロショウジョウバエ(Drosophila melanogaster)を用いて、このPhaedra1の機能を明らかにするべく、 (1)Phaedra1の局在、(2)活性酸素(ROS)によるPhaedra1の発現調節、(3)Phaedra1の生理機能、これら3つの実験を行った。 その結果、Phaedra1はキイロショウジョウバエの体中の組織で発現していたが、特に脂肪体と中腸において発現量が多かった。高温ストレス、或いはROSの一種である過酸化水素(H2O2)の投与により、Phaedra1の発現量が増加することを確認した。Phaedra1発現抑制の効果を、Gal4-UAS systemを用いて解析した結果、神経細胞特異的にPhaedra1を発現抑制した個体は、無処理の個体よりも高温耐性が増強するということが分かった。さらに、発現抑制することで、致死ストレス後の脳神経系における、カスパーゼの活性および細胞死数が減少する傾向が確認された。以上の結果から、Phaedra1が神経細胞死の誘導に関与しているという可能性が示唆された。
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