研究課題/領域番号 |
19J12307
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
平野 綾香 大阪大学, 言語文化研究科, 特別研究員(DC2)
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研究期間 (年度) |
2019-04-25 – 2021-03-31
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キーワード | 言語学 / 記述言語学 / タイ諸語 / ヌン語 |
研究実績の概要 |
本年度は現地の方の協力のもと、ベトナムランソン省チャンディン県でヌン語の調査を行った。また、現地調査以外にもインターネットを介して調査協力者と連絡を取り、補足的調査を行った。これにより得られたデータを整理・検証し、その成果を論文や口頭発表の形で公表した。具体的には、①チャンディン県のヌン語の音韻体系、②チャンディン県のヌン語とタイー語に見られる音韻的差異、③ヌン語の名詞句構造、④ヌン語の動詞連続について考察を行い、その成果を公表することができた。①および②に関して、チャンディン県はベトナム国内で標準タイー・ヌン語地域とみなされているにも関わらず、当該地域のヌン語の詳細な記述はこれまでされてこなかった。本年度はDoan Thien Thuat(1996)による標準タイー・ヌン語やタイー語チャンディン県方言との比較を通してヌン語チャンディン県方言の音韻的特徴を明らかにした。③に関して、ヌン語は「数詞+類別詞+名詞」という名詞句構造を基本とするものの、数詞1は名詞の後ろに生起して「類別詞+名詞+数詞1」という語順になることを明らかにした。また、名詞句内で数詞1と共起できる修飾要素の量に制限があることを指摘した。これは数詞1は単数不定を表すマーカーとして機能しており、修飾要素が増えるということは聞き手による同定が容易になることにつながり、数詞1が持つ単数不定の意味と相入れないためだと考えられる。④に関して、ヌン語の動詞連続で「上がる」「下がる」「入る」「出る」「過ぎる」といった移動の意味を持つ動詞が生起する際の動詞連続の構造を明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度はヌン語チャンディン県方言の音韻体系を考察し、ヌン語の包括的な文法記述に向けて名詞句構造や動詞連続を分析することができた。新型コロナウイルス感染拡大の影響で計画した現地調査のうち1回は中止せざるを得なかったが、代替策としてインターネットを介した補足的調査を継続的に行なっている。このような状況から、本研究課題は現時点で概ね順調に進展していると考える。
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今後の研究の推進方策 |
新型コロナウイルス感染拡大の影響で本年度に計画した現地調査のうち1回はやむなく中止せざるを得なかったが、代替策としてインターネットを介した補足的調査を行なっている。今後は現地調査ができるようになったら速やかに調査ができるよう準備をしつつ、これまで収集したデータの分析を行う。分析上必要な場合は、インターネット上での補足的調査を行い、ヌン語の文法記述の精度を高めていきたい。
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